自己調整学習?ってなんだか聞きなれない言葉ですね…
まだまだ現場には浸透していない考え方ですからね。しかし、子どもたちの主体性を伸ばすためには、これ以上ないほど適している考え方だと思いますよ。
自己調整学習とは?
自己調整学習とは「動機づけ・学習方略・メタ認知の3要素において、自らの学習過程に能動的に関与して進められる学習」
https://www.asahi.com/edua/article/
さまざまな論文も出ていますし、ネットで検索すれば無料で読むこともできますので、学術的なことを詳しく知りたい方は調べてみるとよいでしょう。ここでは簡単に概略のみを説明しようと思います。
まず、「動機付け」とは「自分はやればできる」という自己効力感のことを指します。モチベーションが受動的でなく、能動的であることがポイントです。
次に、「学習方略」とは学習方法のことです。教科書を読み返す、音読する、単語帳を作る、ノートに書きだす…といった、学習するための方法のことです。
最後に「メタ認知」とは、認知をより高位から認知することです。自分自身がどのように考えているのかを、客観的に考えることです。
これらの3つの要素について、学習者(子ども)が、能動的にかかわっていくことが「自己調整学習」と呼ばれる学習方法です。
その宿題、意味ありますか?
今年度、僕の受け持つクラスでは、宿題に「自己調整学習」を取り入れました。宿題と言えば、毎日全員に対して同じ課題が出され、それを家庭で取り組む…といった方式がおなじみです。しかし…本当に意味があるのでしょうか?
学力の差がある子どもたちに対して、同じ課題を与えることは、はっきり言って効果が薄いでしょう。学力が高い子どもたちにとっては、退屈なだけです。すでにわかっている課題に、取り組むことを強要されます。一方で、学力が低い子どもたちにとっても、全員一律の宿題は苦痛を強いるだけです。わからないことを再認識させ続けることで、「自分は価値がないのだ」と繰り返し感じさせることになります。
学力差のある子どもたちのどの層を狙うかは課題の難度によりますが、狙った層には効果があるものの、クラス全体に対しては残念ながら効果はかなり限定されたものとなるでしょう。
最大の問題は、教員がこのことについての思考を止め、今までやってきたからというだけで無意味とも言える宿題を課し続けていることです。自己調整学習はこの点に光を当てる学習方法です。
超有名な実践「けテぶれ」
僕が参考にしたのは、葛原祥太先生の実践「けテぶれ」です。
葛原先生は「計画」「テスト」「分析」「練習」をひとつのサイクルとして、このサイクルを子どもたちが自分で回していくことが「勉強」であると定義しました。
葛原先生にならい、僕も毎日の宿題を、次の単元テストに向けたテスト対策の勉強をしてくることとしました。自分で目標点数を決め、そのための勉強をします。その方法は自由としました。
すると子どもたちは自分で学習方法を考えてくるようになりました。漫画を作って描いてみたり、自分の苦手だけを集中して勉強してきたり…僕も毎朝子どもたちのノートを見ることが楽しみになっていました。
また、自己調整学習は保護者にも好評でした。「今までの宿題は、ただこなせばよいというものでした。自己調整学習に取り組み始めて、自分で教科書を開き、調べるようになりました」「意味のない手の運動ではなく、自分で自分のための勉強ができるようになりました」といった意見をいただきました。
格差が開く可能性
自己調整学習は、子どもたちが目標を決め、学習方法を決めるものです。ですから、子どもたちの意欲や能力によってその効果が異なります。それぞれの力に合った学習となることが理想なのですが、サボることも可能です。そのため、しっかりと取り組めた子と、そうではない子、あるいはやり方を身につけられなかった子との差が開きます。
ここについては注意が必要です。子どもたちの主体性を重視しているからこそ、目標の設定を誤れば、意欲を奪うことにもつながりかねません。とはいえ、そこも含めて子どもたちに学ばせていくのが、この「自己調整学習」です。目標と結果を照らし合わせて、自分が定めた目標が適切であったかどうかを分析し、自分で学ぶ力をつけることを目的としています。
だからこそ、うまく目標設定ができていなかったり、どんな学習をすればいいのか迷っていたりする子に対しては、コーチングしながら丁寧に支援をしていく必要があります。
まとめ
自己調整学習には、大きな可能性を感じます。
いかがでしたか?全員が同じ宿題に取り組むことは、もはや時代に沿っていない気がします。教員が習熟度別に宿題を用意してもよいのですが、時間がかかりすぎますし、第一子どもたちの主体性ははぐくむことができません。自己調整学習で、教員の負担を減らしつつ、子どもたちの力を伸ばしてみませんか。
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