クラスの子が「先生、僕の筆箱が壊されている!」と言ってきました。どう対応したらいいんでしょう…?
小・中問わず、ありがちな生徒指導案件ですね。ある程度セオリーがありますので、基本的な対応をおさえておきましょう。
物を無くされた・壊された子に寄り添う
物がいつの間にか無くなっている、壊されている。想像するだけでとても恐ろしくなる状況です。まずはそんな状況にある子どもに寄り添い、共感を示しましょう。教員は味方であると伝えましょう。普段のその子の様子を知っているがゆえに「あなたの管理が良くなかった」「いつも散らかしているから」といった言葉が出てきそうになるかもしれませんが、そこはぐっとこらえましょう。これはすべてに共通する考え方ですが、加害者が100%悪いです。ただでさえ気を落としている状態の子どもに心ない言葉をかけないよう、十分に注意しましょう。
僕がそう考える理由の一つは、こういった「物が無くなる・壊される」といったトラブルは、円満に解決することが非常に少ないからです。最も良いのは物を取った・壊した犯人が見つかり、被害を受けた子どもに対して謝罪と弁償があることです。けれどもこのような解決に至るケースは稀です。ほとんどの場合、犯人がわからず有耶無耶のうちに風化していきます。被害を受けた子どもは、やられ損で終わることが多いです。だからこそ、せめて教員が被害を受けた子どもに寄り添う必要があるのです。この対応を誤ると、子ども・保護者の怒りや憎しみは教員に向かいます。
管理職への報・連・相
生徒指導においては、管理職への報連相がことさらに重要です。これは自分の指導の方向性を確認するためでもありますし、万が一対応を誤ったときにも自分一人が責任を被らないようにするためでもあります。特に子どもだけでなく、今回のように親への連絡も必要になってくるときには必須です。指導に入る前に管理職に報告し、連絡し、そして対応を相談しましょう。
言うまでもなく、管理職とは普段から良い関係を築いておかなくてはいけません。いつもは塩対応なのに、困ったときだけ助けてもらおうなんて虫が良すぎますよね。生徒指導の場面で協力してもらおうと思うのであれば、日常の何気ない会話から関係を作っていくことを意識しておきましょう。これは管理職とのことだけでなく、子どもも含めたすべての人間関係において言えることです。
保護者との連絡・協力が重要
物が壊されている以上、保護者への連絡は必ず行いましょう。子どもが持っているものは、全て保護者が買い与えたものだからです。また、個人の持ち物が壊されていることは、子どもにとっても保護者にとっても不安なことです。その心情に寄り添いながら、丁寧に対応する必要があります。
基本的には保護者と子どもの不安な気持ちに寄り添いながら、教員が味方であることを伝えるようにします。ただし、上述したようにこの手の事件は円満に解決することが非常に難しいという特徴があります。そのため、保護者には「過去の例から、加害児童(生徒)が見つからない可能性が高い」ことを理解してもらう必要があります。なかなか言いづらいことではありますが、きちんと説明しておきたいところです。これがないと、延々と”犯人探し”をしなくてはならなくなり、学級の子どもたちのことを信じられなくなっていきます。そうなると学級の雰囲気は一気に崩れます。
注意喚起と情報提供の呼びかけ
保護者からの了解を得たうえで、学級の子どもたちにも事件のことを伝え、情報を集めます。事件のことを初めて子どもたちに話すときには、その表情をよく観察しましょう。中には後ろめたさから、目を合わせられない子もいます。そういった子には「何か知っていることがあるの?」と聞いてみましょう。意外な突破口になることもあります。
子どもたち全体から情報を集めるとき、その出どころについては守られなくてはなりません。「お前がチクったせいで」と逆恨みが発生することを防ぐためにも、子どもたちが「情報を先生に話しても他の子にはバレない」と感じているようにしたいものです。
子どもたちの様子を見守る
もちろん、子どもたちの様子は普段からよく見ているべきなのですが、こういったクラス全体に不安を与えるような指導をした際には、特に注意深く見守りましょう。「物を壊すやつがいる」「でもだれかわからない」という状況は、子どもたちの心を不安にさせます。指導した件に直接かかわらなくても、何か別のことが起きる可能性も高くなります。
また、保護者に対して「今後、同様のことが無いように注意する」とした場合、やはり教室で目を光らせる時間を増やさなくてはいけません。被害を受けた子が「先生がきちんと見てくれている」と感じなくては、指導したことでかえって信頼を損ねることにもなりかねません。
番外編:意外な犯人
全てのケースで当てはまるとは思いませんが、このような「誰に物が壊されたかわからない」とき、被害を受けた子が自分で壊している場合があります。
目的は「注目を得ること」です。親や教員、または級友から注目を得ようとして、自分で自分の物を壊すことがあります。とはいえこれは特殊なケースですので、こういった可能性もある、くらいにとどめておきましょう。
特に「本当に誰かに物を壊されているのに」「教員に『自分でやってるんじゃないの?』と疑われた」場合、子どもや保護者との関係は修復不可能なほどに破綻する恐れがあります。あくまでも可能性の一つとして考え、決定的な証拠が無ければ口に出さない方がよいでしょう。
まとめ
子どもたちの不安に寄り添う姿勢を大事にしましょう。
いかがでしたか?特に人間関係の固まってくる夏~秋ごろに発生することが多いように思います。円満に解決することは少ないと覚悟し、それでも被害を受けた子のため、また次の被害を生まないために行動しましょう。問題と本気で向かい合う姿勢を見せることが重要です。
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