超勤4項目ってよく聞くんですけど、結局何のことなんですか?
今回はこんな疑問にお答えします。
・長時間労働に苦しんでいる人
・超勤四項目について知りたい人
・管理職と交渉する材料を探している人
教員には、他の職業とは全く異なるルールがいくつか存在します。
今回紹介する「超勤4項目」もそのひとつです。
この特別ルールを知っていれば、それだけで管理職との交渉が有利になること間違いなし!
不当な命令に対抗できる手段を得られるからです。
先に結論を書いておきます。
・超勤4項目に該当するのは 「実習」「行事」「職員会議」「非常事態」の4つ である
・職員会議での決定権は校長にある
・部活など、超勤4項目に該当しない業務は正当に拒否することができる
「管理職と交渉したい」「長時間労働をなんとかしたい」という方はぜひ参考にしてみてください!
超勤4項目とは
超勤4項目(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/041/siryo/attach/1417145.htm)
教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。
教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。
イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
現行制度上では、超勤4項目以外の勤務時間外の業務は、超勤4項目の変更をしない限り、業務内容の内容にかかわらず、教員の自発的行為として整理せざるをえない。
このため、勤務時間外で超勤4項目に該当しないような教職員の自発的行為に対しては、公費支給はなじまない。また、公務遂行性が無いことから公務災害補償の対象とならないため、別途、必要に応じて事故等に備えた保険が必要。
そもそもの前提として、教職員には残業がありません。
これは勤務時間内におさまる量の仕事だから、というわけでは決してありません。
教職員の仕事は管理するのが難しいから、という理由です。
したがって、残業は存在せず、残業代も支給しない、という法律が存在します。
「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」、いわゆる「給特法」です。
給特法についてのくわしい解説はこちら
ですので、時間外勤務が理論上存在しないのです。
そのため、教職員に対して勤務時間外に業務を命令するときには、4つのことだけに絞られますよ、というのが超勤4項目です。
その4つとは、
- イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
- ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
- ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
- ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
この4つです。
順番に解説していきます。
イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
文字通り、学校の外で行う実習や、その実習に関する業務についてです。
高校などで資格を取得するときに必要とされる場合があるでしょう。
この際は他施設との打ち合わせや調整、子どもたちの登校・帰宅が勤務時間外になる場合も十分にあり得ます。
そのため、管理職は「臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限」り、時間外勤務を命じることができます。
ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
修学旅行をはじめとして、学校の行事に関する業務についてです。
学校の行事には、次のようなものがあります。
学校行事とは(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/toku.htm#gakkou)
- (1) 儀式的行事
学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。 - (2)文化的行事
平素の学習活動の成果を発表し,その向上の意欲を一層高めたり,文化や芸術に親しんだりするような活動を行うこと。 - (3)健康安全・体育的行事
心身の健全な発達や健康の保持増進などについての理解を深め,安全な行動や規律ある集団行動の体得,運動に親しむ態度の育成,責任感や連帯感の涵養,体力の向上などに資するような活動を行うこと。 - (4)旅行・集団宿泊的行事
平素と異なる生活環境にあって,見聞を広め,自然や文化などに親しむとともに,集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるような活動を行うこと。 - (5)勤労生産・奉仕的行事
勤労の尊さや創造することの喜びを体得し,職場体験などの職業や進路にかかわる啓発的な体験が得られるようにするとともに,共に助け合って生きることの喜びを体得し,ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるような活動を行うこと。
儀式的行事は、入学式や始業式、終業式、卒業式などです。
文化的行事は、音楽会や文化祭などです。
健康安全・体育的行事は、避難訓練や運動会、体育大会などです。
旅行・集団宿泊的行事は、修学旅行や林間学校、遠足などです。
勤労生産・奉仕的行事は、各行事の準備・片付けや、大掃除などです。
以上の学校行事に関しては、 管理職は「臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限」り、時間外勤務を命じることができます。
ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
職員会議とは(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kyouiku/02zesei-sankou-shokuinkaigi.html)
「職員会議」は,学校運営が円滑に行われるように,校長が,所属職員の意見を聞いたり,校長の運営方針を周知させたり,職員相互の事務連絡を図るものであり,意思決定は,校長自らの権限と責任において行う,つまり,校長が職務遂行するに当たって,それを補助する機関として位置づけられるものです。
職員会議は、校長の意志決定を行うための補助をする機関です。
これを勘違いしている教員もかなりいます。
職員会議で提案したのに、校長の反対で意見が通らなかった!
とか
職員会議で反対多数だったのに、校長が無理やり実施した!
といったように、職員会議が合議制である、つまり多数決で意思決定をはかる場であると勘違いしているのです。
これはまったくの間違いです。
職員会議は校長の決定を補助するものであり、あくまでも決定権は校長1人にあります。
え、それってちょっとひどいのでは…?
いえ、これには法的な根拠があるのです。
学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)
第四十八条
小学校には、設置者の定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、職員会議を置くことができる。
2 職員会議は、校長が主宰する。
2000年の改正により、これまで曖昧だった職員会議の性格が定められることになりました。
改正より前は「最高機関説(多数決の意思決定に校長も従う)」「諮問機関説(職員会議での意思決定を校長が尊重する)」「補助機関説(最終的な決定権は校長にある)」の3つがありましたが、あらためて「補助機関」であることが定められました。
その証拠に、2000年の改正に伴って出された「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(通知)」では、次のように示されました。
(職員会議関係)職員会議は、校長を中心に職員が一致協力して学校の教育活動を展開するため、学校運営に関する校長の方針や様々な教育課題への対応方策についての共通理解を深めるとともに、幼児児童生徒の状況等について担当する学年・学級・教科を超えて情報交換を行うなど、職員間の意思疎通を図る上で、重要な意義を有するものである。しかしながら、職員会議についての法令上の根拠が明確でないことなどから、一部の地域において、校長と職員の意見や考え方の相違により、職員会議の本来の機能が発揮されない場合や、職員会議があたかも意思決定権を有するような運営がなされ、校長がその職責を果たせない場合などの問題点が指摘されていることにかんがみ、職員会議の運営の適正化を図る観点から、省令に職員会議に関する規定を新たに設け、その意義・役割を明確にするものであること。
ここでは、職員会議には意思決定権がなく、あくまでも決定権は校長にある、との解釈がなされています。
このような職員会議に関して、管理職は「臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限」り、時間外勤務を命じることができます。
ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
地震や津波など非常災害が発生した場合や、緊急性の高い生徒指導に対応する場合です。
例えば非常災害が発生した場合、学校の体育館が避難所として開放されることが多いのは周知のことだと思います。
その際にはどうしても時間外勤務を命じなくてはならない場合もあるでしょう。
また、生徒指導の中には、どうしても今日中に対応しなくてはならない、そんなケースもあります。
そのような緊急事態には、 管理職は「臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限」り、時間外勤務を命じることができます。
超勤4項目に該当しない場合は、時間外勤務に業務に従事する命令を拒否できる
重要なことは、以上の超勤4項目に該当しない場合については、時間外勤務を拒否することができる、ということです。
超勤4項目に該当しないけれど、時間外に行っている業務と言えば…
- 部活動
- 登校指導
- 交通当番
などが挙げられます。
つまり、これらの業務は拒否することができるのです。
部活動の顧問を拒否できる根拠についてはこちらの記事にまとめました。
もっとも、人間関係もありますのでなかなか拒否することも難しいものではありますが…。
それでも、拒否できるかどうかを知っておくことは重要だと思います。
結論:超勤4項目は「実習」「行事」「職員会議」「非常事態」
それでは今回の結論です!
・超勤4項目に該当するのは 「実習」「行事」「職員会議」「非常事態」の4つ である
・職員会議での決定権は校長にある
・部活など、超勤4項目に該当しない業務は正当に拒否することができる
「知っている」と「知らない」では大違いです。
かつて僕は「教員は残業代にあたる教職調整額を受け取っているから、時間外の部活動顧問をやらなくてはならない」と言われました。
でも、それは真っ赤なウソでした。
教員を便利なコマとして使いたい人は、案外たくさんいます。
都合よく使われないようにするためにも、ルールをきちんと学んでいきましょう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、良い教員ライフを!
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