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部活動が教員の仕事ではなくなる? ~「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付」について~

うさ美
うさ美

やっと一週間終わった…でも明日も部活動の練習があって、明後日は大会です。もう疲れました…。

はんめん
はんめん

部活動は給与も発生していませんし、本来であれば教員の職務ではないのですが、そこがうやむやにされてきています。教員のブラック化を助長している存在であることは間違いありません。

うさ美
うさ美

でも職務とかよくわからないし、子どもたちが真剣に取り組んでいる様子を見ると、ついつい時間をとってあげたくなってしまう自分もいるんです!

はんめん
はんめん

その気持ちは十分に理解ができますが、そこに付け込まれてきたことも事実です。教員はもっと働き方のルールについて、知っていかねばなりません。今回は7月17日に文科省から出された「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」を解説します。

目次

教員の職務に「部活動」は入らない

今回の通知では、教員の職務が改めて明確に示されました。

「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」より

【学校の業務であるものの必ずしも教諭等が担う必要のない業務】
①調査・統計等への回答に係る対応に関すること
②児童生徒の休み時間における対応に関すること
③校内清掃に係る対応に関すること
部活動に係る対応に関すること
【基本的には学校以外が担うべき業務】
⑤登下校への対応に関すること
⑥学校外における放課後や夜間などの見回り,児童生徒の補導への対応に関すること
⑦学校徴収金の徴収・管理に関すること
⑧地域ボランティア等との連絡調整に関すること(地域学校協働活動の一環として地域学校協働推進員等が担うべきものをいい,校務分掌等で教諭等の職務の内容として定められた地域学校協働活動推進員等との連絡調整の職務を除く。)

部活動は「教諭等が担う必要のない業務」である、と明記されました。「部活動に係る対応」ですから、部活動の練習も、大会への引率も、大会の運営も、保護者対応も、連絡網の作成も、練習計画の作成も、すべて「教諭等が担う必要のない業務」であると示されているのです。これはとても大きなことです。

ただし、「必ずしも」と入っていることが気にかかります。つまりは管理職が「代わりの指導員を探したんだけど、どうしても無理なんだ!教諭の皆さんに部活動をお願いしたい」と言われた場合、反論できない可能性がある、ということです。この点は不満が残るところですが、学校現場の実情も考慮しての言い回しであるとは思われます。すぐに部活動をゼロにすることは不可能ですが、少なくとも前進していることは評価できますね。

従わないと法令違反?

さて、個人的に重要だと思うところは、これが「管理規則」の改善を求めるための通知である、ということです。以前より教員の職務については「ガイドライン」が出されていましたが、「ガイドライン」はおおまかな指針であるために、法的な拘束力がありません。ですから土日のうちどちらか一日を休養日とする、という部活動に関するガイドラインが出たところで、まったく守られていないのです。

それに対して「管理規則」には、法的な根拠があります。

地方行政法第33条(学校の管理)

1 教育委員会は、法令又は条例に違反しない限度において、その所管に属する学校その他の教育機関の施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取扱その他学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項について、必要な教育委員会規則を定めるものとする。この場合において、当該教育委員会規則で定めようとする事項のうち、その実施のためには新たに予算を伴うこととなるものについては、教育委員会は、あらかじめ当該地方公共団体の長に協議しなければならない。
2 前項の場合において、教育委員会は、学校における教科書以外の教材の使用について、あらかじめ、教育委員会に届け出させ、又は教育委員会の承認を受けさせることとする定を設けるものとする。

法に則った「管理規則」であれば、これに違反することはつまり、法令違反になると考えられます。「ガイドライン」とは重みが全く異なることが、今回の通知で重要な点です。この点に関しては、文科省が教員の働き方を改革すべく一歩踏み込んできた印象です。

明日からすぐ!というわけにはいかない

ここについては、不満の残るところです。

今回の通知を受けて各教育委員会が「管理規則」を改善するまでには時間がかかるでしょう。文科省も教育委員会に対して非常に低姿勢です。

文部科学省としては今後とも,必要な制度改正や条件整備をはじめとして,学校と社会の連携の起点・つなぎ役として前面に立ち,学校における働き方改革の取組を総合的に進めてまいります。各教育委員会におかれては,「学校における働き方改革に関する取組の徹底について(通知)」(平成 31 年3月 18 日 30 文科初第 1497 号文部科学事務次官通知)も踏まえ,引き続き,学校における働き方改革を進めるために必要な取組の徹底をお願いします。

「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」より

教諭等の職務内容は,関係法令等を踏まえ,服務監督権者である教育委員会が定めるものであり,本参考例はそのための基礎資料として活用していただくことを想定している

「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」より

教育委員会に対して強く出ることができない文科省の姿勢がよく表れています。現場の裁量を重んじているというよりは、コロナ対策に関してもさんざん言われていますが、責任を下へとなすりつけていく日本社会の構図が透けて見えますね。教員の長時間労働は深刻な問題ですから、文科省がもっと切り込んでくれることを期待したいものですが、同時に現場の教員がこういったことを知り、管理職に突き付けていくことが必要だとも思います。

「職務」=学校の仕事全体のうち職員に与えられて果たすべき任務・担当する役割

そもそも職務とは何でしょうか?文科省のHPには、このようにありました。

職務とは (文部科学省HPより)

 「職務」は、「校務」のうち職員に与えられて果たすべき任務・担当する役割である(具体的には、児童生徒の教育のほか、教務、生徒指導又は会計等の事務、あるいは時間外勤務としての非常災害時における業務等がある。)。
 「校務」とは、学校の仕事全体を指すものであり、学校の仕事全体とは、学校がその目的である教育事業を遂行するため必要とされるすべての仕事であって、その具体的な範囲は、

1.教育課程に基づく学習指導などの教育活動に関する面

2.学校の施設設備、教材教具に関する面

3.文書作成処理や人事管理事務や会計事務などの学校の内部事務に関する面

4.教育委員会などの行政機関やPTA,社会教育団体など各種団体との連絡調整などの渉外に関する面

等がある。なお、職務の遂行中又はそれに付随する行為の際の負傷は、公務上の災害として補償が行われる。

つまり職務とは「学校の仕事全体のうち職員に与えられて果たすべき任務・担当する役割」と言えるでしょう。上記の1~4のうち、部活動が関わりそうなのは1ですが、部活動は教育課程に基づいていませんからね。この点でも、やはり部活動は学校から切り離していく必要があるでしょう。

部活動は今後、外部委託になっていく?

ここまではっきりと文科省が「管理規則」に関する通知を出した以上、部活動を勤務時間内に行うことは不可能になっていくでしょう。「職務専念義務違反」となるからです。

地方公務員法第35条(職務に専念する義務)

職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

部活動が「職務」ではないのであれば、勤務時間内に部活動を行うことは「職務にのみ従事しなければならない」とする地方公務員法第35条に明確に違反します。

それでは勤務時間外に行えばいいんじゃないの?という意見もありそうですが、こちらは「命令」することができません。勤務時間外に業務を命ずる時には、超勤4項目に限定されるからです。

超勤4項目とは(文部科学省HPより)

教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。

教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。

イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務

ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務

ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務

ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

 現行制度上では、超勤4項目以外の勤務時間外の業務は、超勤4項目の変更をしない限り、業務内容の内容にかかわらず、教員の自発的行為として整理せざるをえない
 このため、勤務時間外で超勤4項目に該当しないような教職員の自発的行為に対しては、公費支給はなじまない。また、公務遂行性が無いことから公務災害補償の対象とならないため、別途、必要に応じて事故等に備えた保険が必要。

これら4つの項目に当てはまるもの以外は、管理職は教諭に対して時間外勤務を命じることはできません。17時以降の部活動も、土日の部活動もすべて、教員の自発的行為とされているのです。つまりはボランティアです。

この点については、先の「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」でも明記されています。

各教育委員会の関係規定において標準的な職務として位置付けられたとしても,教諭等に対し時間外勤務を命ずる場合は,いわゆる「超勤4項目」に当たる職務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限られるものであることに変わりはない

「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」より

部活動を勤務時間内に行うのもダメ(そもそも休憩時間である場合が多いでしょう)、時間外勤務も命じることができない…となれば、部活動は学校から切り離され、外部へと委託されるしかないでしょう。活動したい児童生徒と、活動したい教員のみが学校外の施設を使って活動していくようになるのではないでしょうか。そうあってほしいものです。

まとめ

はんめん
はんめん

部活動は長時間労働の温床です。

まとめ

・今回の通知は間接的に法的な力があるぞ!

・上からの改革も期待しつつ、声を上げたり仲間を増やしたりしよう

・部活動は外部委託へと向かう流れ

いかがでしたか?部活動が学校から切り離されていく流れとはいえ、部活動に対し熱心な教員がいることもまた事実。そしてその教員によって、やりたくなくても部活動を渋々やっている教員や児童生徒がいることもまた、事実です。

教員の長時間労働は職業全体の共通の課題です。この課題を解決するためには、部活動の在り方を変えていかなくてはなりません。そのために教員は絶えず学び、現場で声を上げていく必要があるのではないでしょうか。

「魅力的な教員」になるためには?

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この記事を書いた人

子どもたちの成長を間近で見ることができる、教員の仕事ってとっても魅力的!でも労働環境が良くないのもまた事実。解決方法を模索しながら奔走する毎日を過ごしています。公立小中学校で勤務して11年目です。
教育大学卒。専門は社会科(政治学)。ネコ派。二児の父。

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