副業に興味があります!でも教員って副業しちゃダメなんですか?
今回はこんな疑問にお答えします。
・副業を始めたい人
・副業をして経済的な余裕を手にしたい人
・今やっていることが副業にあたるか不安な人
「教員は副業してはいけない」
どこかで聞いたことはありませんか?
副業をしてみたいな、と思う人にとっては、不安になる言葉ですよね。
結論から言って、そんなことはありません!
ここではいくつかの法令から、教員にできる副業を紹介していきたいと思います。
先に結論を書いておきます。
・公立学校の教員も許可を得れば副業が可能
・教育に関わる副業かそうでないかで許可を得る先が変わる
・本業に支障が出ないことが絶対条件
「何か副業を始めてみたい」「経済的な余裕が欲しい」と思っている人は、ぜひ参考にしてみてください!
教員の副業は許可を得ればOK
それでは、教員の副業が法的にどんな扱いをされているのかを見ていきましょう。
①地方公務員法第38条 (営利企業への従事等の制限)
地方公務員法第三十八条
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
まずは地方公務員法です。
第38条には、任命権者の許可を受けなければ、営利企業を営んだり、報酬を得たりしてはならない、とあります。
逆にいえば、許可さえ得ることができるのであれば、副業をしてOK、ということです。
任命権者、とは公立学校の教員の場合は「大学附置の学校以外の公立学校(幼保連携型認定こども園を除く。)にあつてはその校長及び教員の任命権者である教育委員会の教育長(教育公務員特例法第13条)」ですね。
地方公務員でもある教員は都道府県の職員ですので、都道府県の教育長の許可が必要である、ということです。
また、 「人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる」ともあります。
人事委員会は各都道府県に置かれていますので、許可の基準は都道府県によって異なる、ということになります。
例えば、次の人事委員会規則は茨城県のものです。
営利企業への従事等の制限の許可基準を定める規則(平28人委規則10・改称)
茨城県人事委員会は,営利企業等の従事制限の許可基準を定める規則を次のように制定する。
(許可基準)第2条 任命権者が法第38条第1項の許可を与えることのできる場合は,職員の職とその事業若しくは事務との間に特別な利害関係又はその発生のおそれなく,かつ,それに従事しても職務の遂行に支障がなくその他法の精神に反しないと認められる場合に限るものとする。
つまり茨城県の場合は「副業をしたとしても特別な利害関係が発生せず、しかも職務の遂行に支障がなく、法の精神に反しない場合」には認められる、ということです。
次に埼玉県の場合を見てみましょう。
埼玉県人事委員会は、地方公務員法に基き、営利企業等の従事制限に関し、次の埼玉県人事委員会規則を制定する。
営利企業への従事等の制限に関する規則
(許可の基準)第三条 任命権者は、職員が法第三十八条第一項及び前条に定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得て事業若しくは事務に従事することの許可の申出をしたときは、次のいずれかに該当する場合を除いて許可することができる。
一 職責遂行に支障を及ぼすおそれがある場合
二 職員の勤務する機関と密接な関係にあつて、職務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合
三 その他公務員として妥当でないと認められる場合
埼玉県の場合は「職責遂行に支障がなく、職務の公平な遂行にも支障がなく、公務員として妥当である場合」は認められる、ということです。
最後に愛知県の場合を見てみましょう。
愛知県人事委員会は、営利企業等の従事制限に関する規則を次のように制定する。
営利企業への従事等の制限に関する規則
(許可の基準)
第三条 任命権者は、職員が前条に規定する地位を兼ね、又は自ら営利企業を営むことについては、左の各号の一に該当しない場合に限り法第三十八条第一項の許可を与えることができる。
一 職員の占めている職と当該営利企業との間に特別な利害関係があり、又はその発生のおそれがあると認められる場合
二 職務の遂行に支障があると認められる場合
三 その他法の精神に反すると認められる場合
愛知県の場合は、「特別な利害関係が発生せず、職務の遂行に支障がなく、法の精神に反しない場合」は副業が認められる、ということです。
微妙にニュアンスが異なりますが、大体同じようなことを言っていますね。
ここまでの副業許可の基準をまとめると、次のようになります。
人事委員会規則から見る地方公務員の副業が許可されるポイント
- 職務の遂行に支障が出ない場合
- 特別な利害関係が発生しない場合
- 法の精神に反しない場合
この3つがクリアできれば、副業の許可は下りるといえるでしょう。
許可かあ…なんだか難しそうですね。
ところが、教員にはちょっとした抜け道があるのです。
②教育公務員特例法第17条 (兼職及び他の事業等の従事)
教育公務員特例法第十七条
教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十七条第一項に規定する県費負担教職員については、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会。第二十三条第二項及び第二十四条第二項において同じ。)において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。
2 前項の規定は、非常勤の講師(地方公務員法第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を占める者及び同法第二十二条の二第一項第二号に掲げる者を除く。)については、適用しない。
3 第一項の場合においては、地方公務員法第三十八条第二項の規定により人事委員会が定める許可の基準によることを要しない。
次に、教員に適用される教育公務員特例法です。
教育公務員特例法によると、「本務の遂行に支障がないと任命権者が認める場合、教育に関する事業や事務に従事することができる」のです。
「できる」と表現しているあたり、教育に関する副業であれば許可が下りやすいと考えられます。
教育公務員特例法のポイントは次の2つです。
- 県費負担教職員については、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会が任命権者
- 教育に関する副業であれば、人事委員会が定める許可の基準によることを要しない。
まず、県費負担教職員について解説します。
県費負担教職員制度
(1)学校の設置者は、その学校の経費を負担するのが原則(学校教育法第5条)であるため、公立学校の教職員の給与は当該学校を設置する地方公共団体が負担するのが原則ですが、市(指定都市を除く。)町村立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程、特別支援学校の教職員の給与については、市町村立学校職員給与負担法により、例外的に都道府県が負担することとされています(市町村立学校職員給与負担法第1条)。
また、同様に市(指定都市を除く。)町村立高等学校の定時制課程の教員の給与は都道府県の負担とされています(同法第2条)。
(2)県費負担教職員の任命権は、都道府県教育委員会に属します(地教行法第37条)。また、県費負担教職員の給与、勤務時間その他の勤務条件については、都道府県の条例で定めることとしています(地教行法第42条)。
(3)これらは、都道府県内の人事交流の円滑化を図るとともに、地方財政の大きな負担となる教職員の給与費を財政的に安定している都道府県の負担とすることで、義務教育水準の維持向上に資することとしています。
つまり、市町村立の公立学校は設置者が市町村であるにも関らず、そこで勤務する教員は都道府県の職員です。
このように都道府県が市町村立の公立学校に勤務する教員の給与を支払っている仕組みのことを県費負担教職員制度といい、それに該当する教職員を県費負担教職員といいます。
通常、その任命権者は都道府県にあります。
ところが、教育公務員特例法において、副業の許可を出すのは市町村の教育委員会である、とされているのです。
これが一つ目のポイントです。
二つ目は、教育に関する副業であれば、先ほどの人事委員会規則にあった許可の基準を必要としない、というものです。
教育に関する副業とは、例えば教育本の執筆であったり、教育に関する講演や、教育に関するブログの運営であったりするでしょう。
これらの活動で利益を得る分には、都道府県の許可の基準を必要としません。
茨城県とか埼玉県とか、あれだけ見た意味は一体…
ま、まあ、教育に関しない副業もあるわけですし!
まとめると、教育に関する副業であれば、許可は市町村の教育委員会が出し、都道府県の人事委員会は関与しない、ということです。
許可を得るための3ステップ
1.校長に相談する
副業の種類によって、誰に許可を得ればよいのか違ってきましたね。
- 教育に関する副業→市町村の教育委員会
- 教育に関係ない副業→都道府県の教育長
よーし!明日、さっそく都道府県の教育長に電話しますね!
ちょっとちょっと!それはダメですよ!
市町村の教育委員会にしても、都道府県の教育長にしても、窓口は校長です。
ですから、校長とよくコミュニケーションをとって、こちらのやりたいことを理解してもらう必要があります。
その際、「本業に支障が出ないかどうか」を判断されることにもなるでしょう。
普段の勤務状況はどうなのか?副業を始めるだけの余裕があるのか?
このようなことを校長は考え、判断するはずです。
あなたが副業を始めて、本業である学級経営や授業がおろそかになったとしたら、その管理責任を問われるのは校長です。
だからこそ、普段のあなたの勤務状況を見て、慎重に判断することでしょう。
もしもあなたが許可を得て副業を始めたいのなら、まずは本業をきちんとこなし、校長からの信用を得る必要があるでしょう。
そのうえで「副業をしたい」と相談するべきでしょうね。
2.営利企業等従事許可申請書を記入する
校長と相談し、許可が得られたら(実際には許可を出すのは校長ではないのですが)、次は書類を作成します。
「営利企業等従事許可申請書」と呼ばれる書類を記入し、提出しなくてはなりません。
こちらについては統一された様式はなく、それぞれの自治体で用意されているものを使用することになります。
下は日光市の 営利企業等従事許可申請書です。「職員の営利企業等の従事許可手続に関する規程」の中に入っていました。
それぞれの自治体によって様式が異なっていますが、書かなくてはならない内容はおおむね次の通りです。
- 事業または事務の名称
- 収入見込み額
- 従事する理由
- 従事する期間
- 従事の程度
まずは勤務している自治体のWebページをチェックしてみましょう!
3.校長を通じて教育委員会や都道府県に提出してもらう
校長との対話も終えた、 営利企業等従事許可申請書も記入できた、となれば、あとは校長を通じて提出してもらうだけです。
その結果、許可が下りれば晴れて副業に邁進することができます。
本業に支障がないように、副業にも精を出しましょう!
許可を得たとしてもNGな行為
もし仮に許可を得たとしても、守らなくてはならないことがいくつもあります。
それは次の3つです。
- 信用失墜行為の禁止
- 秘密を守る義務
- 職務に専念する義務
順番に見ていきましょう。
信用失墜行為の禁止 (地方公務員法第三十三条)
職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
正直なところ、何が信用を傷つける行為に当たるのか、広すぎて定義できません。
仕事上の職権乱用や収賄はもちろんのこと、飲酒運転や傷害事件、わいせつ行為など、仕事とは無関係のことであっても該当します。
体罰や情報漏洩であっても該当します。
とにかく、公務員という職の信用を傷つけた、と判断されれば信用失墜行為とみなされるのです。
個人的には、一番気を付けなくてはならないと思います。
講演会での発言が公務員として不適切だ、信用失墜行為だ、ともなれば職を失う可能性も出てくるからです。
秘密を守る義務 (地方公務員法第三十四条)
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする
職務上知り得た秘密。
教員であれば、保護者や児童の住所や家族構成、成績などがそれにあたります。
それらを漏らすことは行ってはいけません。
退職したとしても、絶対に秘密を守る義務があるのです。
職務に専念する義務 (地方公務員法第三十五条)
職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
職員は勤務時間と能力の全てを職責遂行のために用いなくてはならない、とされています。
副業の許可が下りたとしても、勤務時間内に本の執筆を行ってはならない、ということですね。
当然ですね!
結論:公立学校の教員の副業は許可を得れば可能!
今回の結論です!
・公立学校の教員も許可を得れば副業が可能
・教育に関わる副業かそうでないかで許可を得る先が変わる
・本業に支障が出ないことが絶対条件
副業に興味のある教員の方って、けっこういるのではないかと思うのです。
「教員は副業が禁止されている」のではなく、「許可を得れば副業が可能」なのです。
自分の生活を豊かにするためにも、また経験の幅を広げるためにも。
副業に挑戦してみるのはいかがでしょうか。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、良い教員ライフを!
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