https://www.kyobun.co.jp/news/20191128_04/
教員の長時間労働には原因がいくつかある、と考えます。
①教員の数が少ないこと
②教員の数に対して、学校に期待されている仕事が多すぎること
③教員の多くが勤務時間に無頓着であること
ざっとこの3つでしょうか。ひとつずつ見ていきます。
教員の数が少ない
図は、 野村総合研究所の報告書「公務員数の国際比較に関する調査」からの引用です。これを見ると、人口に対する日本の公務員数が、他国と比べてかなり低い水準にあることがわかるかと思います。この背景には様々な要因があると思いますが、ここでは割愛します。教員の数がどうこうの前に、そもそも日本は公務員の数自体が少ない国なのであると理解してください。
教員の数に対して、学校に期待されている仕事が多すぎること
ここがメインです。もともと数の少ない公務員に対して、学校に期待されている仕事は、はっきり言って多すぎます。
ざっとあげてみましょう。
①教科指導 ②生徒指導 ③進路指導 ④部活動指導 ⑤キャリア教育 ⑥学習方法の定着 ⑦登校時・下校時の安全指導 ⑧テストの作成及び採点 ⑨成績処理 ⑩教室をはじめとする環境整備及び維持 ⑪家庭との連携 ⑫地域との連携 ⑬教職員の研修 などなど…
思いつくままに書いてみたけど、改めてみるとめっちゃある…!これは過労死するわ。
教室には40名弱の生徒がいて、その倍の保護者に対応し、部活動では休日をつぶして生徒指導にあたり、問題が起きれば夜間であろうと連絡をとり、場合によっては家庭訪問をします。
でも、これらの仕事の中には、法的根拠のないものも多いのです。例えば、部活動や通知表の作成などは、本来教師の仕事ではありません。それにも関わらず、教師のボランティアという形で慣習として行われてきています。
教師になる人なんて、みんな基本的にはお人よしです。生徒のためを思って行動する人ばかりです。たまに変な人も混じりますけどね。ニュースになっちゃう人です。でも、ほとんどは生徒のしあわせと成長を願って、日々教育活動に従事しています。
だからこそ、このような状態になってしまったのでしょう。
登校中の生徒の交通マナーが悪かったぞ!
すみませんでした。よく指導します(保護者の責任だけど)。
とか、
家に泥棒が入りました!
マジっすか!とりあえずすぐ行きます(警察の仕事だけど)。
どちらも経験談です。地域の人たちや保護者も、「何かあったら、すぐ学校に連絡する」という行動様式になっています。地域の中で学校が一定以上の役割を果たしていることはいいことなのですが、その役割をこなすための人間が少なすぎるのです。だからひとりの人間が長時間労働してカバーしなきゃいけなくなって、病んだり過労死したりするんです。教師を病まそう、辞めさせようと悪意でもって学校に連絡してくる方もたまにいますが、多くは善意です。「生徒のことが心配で」「よかれと思って」という連絡が学校への期待となり、実際にこなせる仕事よりもはるかに多くの仕事を抱え込むことになっているのでしょう。
その上、外国語の必修化?プログラミング?道徳の教科化?ええ、言っていることは間違ってませんよ。ただ、それをやる現場がどんな状態なのか、アイデアだしている人たちはご存知なんでしょうかね?いっぱいいっぱいですよ。何かをやめてから、次のことにチャレンジさせてほしいものですが、実情としてはビルドアンドビルドアンドビルドです。
教員の多くが勤務時間に無頓着であること
これも大きな原因です。
多くの教員は、とても「良い人」です。ですから、「全ては子供たちのために」なんていうスローガンを真に受けすぎて、自分の人生の時間を削ってまで教職に奉仕している、と思います。
たしかに公務員は「公僕」ですけどね。でも、一番大切なものは、本当にそれなのか?と思います。生徒の生活なんでしょうか。先生自身の生活じゃね?と僕なんかは思うんですけどね。教師がプライベートを大切にできなくて、生徒の前で最高のパフォーマンス(授業とか生徒指導とか)を発揮できるのか?とも思いますし。”ブラック”な働き方をしている教師が、生徒に夢を語れるのか?人生っていいもんだよって話せるのか?甚だ疑問です。
でも教師たちは、「良い人」ですから。そういう働き方が子供たちのためになっているって本気で思っています。結果として、長時間労働をしている人=教育に熱心な先生という図式が出来上がります。
一般企業に勤めた経験がないのでよくわかりませんが、残業ばかりしている社員は有能な先生なのでしょうか?必ずしもそうではないように思います。教育現場では、時間をかけていくことが評価につながりやすい気がします。ブラック部活なんかも、ここが根っこではないでしょうか。
ですから、働き方改革が叫ばれている今こそ!教師の働き方、まずいんじゃないの?との認識が広まりつつある今こそ!教師自身が、この働き方を異常だと認識し、改め、職場の先生方に広めていくことが重要です!
変形労働時間制の導入でお茶を濁されちゃーいかんですよ。
ようやく本題。変形労働時間制とは。
8月は残業時間が少ないから、この時間は勤務時間を少なくするよ!
え、ちょ、ま…8月も残業しているんですけど。部活とか研修とか出張とかあるんですけど…
そいでもって、他の月は勤務時間を増やすよ!
ええ?ってことは、5時以降に職員会とかが普通に入る(なお、職員会自体は超勤4項目のうちのひとつですので、本来は残業として命じることができます。ただ、多くの学校では配慮されている…と信じたいです)わけですか?さらに残業増えますよ?保育園に子ども預けている人はどうなるの?
そうすれば、他の月の残業時間が減るでしょ?働き方改革だよね!
家に持って帰る仕事が増えるんだろうなあ。確かに記録の上では残業時間は減るだろうけど、これを働き方改革と認めていいのだろうか…?
というものです。
これ、アリですかね?僕はナシだと思います。根本的な原因は上にあげた3つですから、何よりもまず人を増やさないといかんと思います。講師を増やすんじゃなく、正規採用を増やしてもらいたい。
そしてその上で、学校がやるべき仕事を法律にのっとって分けていくべきです。仕分け人、仕事だよっ!
同時に教師の意識改革が必要です。仕事がひと段落着いたら、どんどん帰りましょう。自分の生活を大切にしましょう。主任クラスの先生方は、若手が帰りやすい職場にしてください。雰囲気を作ってください。教師が心身ともに万全の状態でなくて、本当に真っ当な教育ができるのですか?
長くなりました。最後に、僕の好きな言葉のひとつを紹介します。マザー・テレサが、ノーベル平和賞を授与されるさい、記者から「世界平和のために、われわれには何ができますか?」と問われたときの言葉です。
「家に帰り、家族を愛してあげてください」
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