久々のこのシリーズ!今回はアントニオ・G. イトゥルベ著「アウシュヴィッツの図書係」です。400ページもある本ですが、一気に読めてしまいます。
アウシュヴィッツとは?
アウシュビッツはドイツ人が設置した最大規模の強制収容所でした。アウシュビッツは、火葬場、絶滅収容所、および強制労働収容所がある強制収容所の集合体でした。ポーランドのクラクフ近郊にありました。アウシュビッツ強制収容所は、アウシュビッツ第1強制収容所、アウシュビッツ第2強制収容所(ビルケナウ)、およびアウシュビッツ第3強制収容所(モノヴィッツ)の3つの大規模な強制収容所で構成されていました。収容されていたユダヤ人の10人中9人、100万人を超える人々がアウシュビッツで命を失いました。4つの巨大なガス室は、それぞれ同時に2,000人が入れました。
https://encyclopedia.ushmm.org/content/ja/article/auschwitz-1
ナチス収容所体制は、ナチス政権の政敵を抑圧するための制度として開始されました。第三帝国時代の初期の頃、ナチスは主に共産主義者と社会主義者を投獄しました。1935年ごろには、人種的または生物学的に劣っていると見なされる人々、特にユダヤ人の投獄も始まりました。第二次世界大戦中には、ナチス収容所体制の編成と規模が急速に拡大し、投獄目的でのみ使われていた収容所で強制労働や殺害もあからさまに行われるようになりました。
ドイツはドイツ占領下のヨーロッパ全域で、ドイツの支配に抵抗した人々や、劣った人種または政治的に好ましくないと判断した人々を逮捕しました。ドイツの支配に抵抗したという理由で逮捕された人々のほとんどは、強制労働収容所や強制収容所に送られました。
(中略)
ドイツ軍はユダヤ人を占領下のヨーロッパ全域からポーランドの絶滅収容所に移送し、そこでユダヤ人を組織的に殺害しました。また、強制収容所にも移送し、そこでユダヤ人は強制労働をさせられました(「労働を通じた絶滅」)。これに加え、数十万人のロマ族(ジプシー)とソ連軍戦争捕虜をも組織的に殺害しました。
https://encyclopedia.ushmm.org/content/ja/article/auschwitz-1
「ユダヤ人であることが罪」(「アウシュヴィッツの図書係」より)であるとされ、ユダヤ人を組織的に絶滅させるために造られた施設が強制収容所です。アウシュヴィッツはドイツが占領したポーランドにある、最大規模の収容所でした。
一人の少女の視点から、戦争をとらえる
戦争という名のもとに、こんなにも軽々しく、命や人生や尊厳が踏みにじられるものなのかと衝撃を受けました。「アウシュヴィッツの図書係」は実在する女性をもとに書かれた小説です。僕にはどこからどこまでが事実であるのかがわかりませんが、文字を目にするだけで情景がありありと浮かんでくるような気さえしました。
平和な日常は突然壊れるのではなく、徐々に徐々に壊されていくこと。母親の「戦争なのよ、エディタ(主人公の名前)。戦争なの」という言葉には、短くとも有無を言わせない重さがあります。
絶対にこの歴史を繰り返してはならないと思いました。
「本」のもつ可能性
図書係であるエディタは、わずかな本を大切に保管し、修復します。それは、いかなる状況であっても「本」こそが人間の想像力を喚起し、喜びを与えてくれるものだと彼女が考えているからです。エディタの管理している本は教師が授業をする際に役立つし、彼女が落ち込んでいるときの慰めにもなります。
ユダヤ人の絶滅を目標としたアウシュヴィッツ強制収容所。絶望しかないような状況下であっても、彼女たちは笑ったり楽しんだり、自由を感じたりできます。それはひとえに想像力の産物です。アウシュヴィッツはおよそ人間らしくない過酷な施設ですが、エディタの管理する本によって教育が行われたり、笑顔があふれたりと、人間らしい営みが生まれます。「本」のもつ可能性を、改めて考えさせられました。
「アウシュヴィッツの図書係」に登場する名言
命はいつもはかないものよ。でもたとえ一瞬でも幸せなら、生まれてきて良かったと思えるわ。
「アウシュヴィッツの図書係」より
今日を生きていられたとしても、明日はどうなるかわからない。ドイツ人の虫の居所ひとつで、簡単に命が奪われていく。「役に立たない」という理由で、何千人もの人々がガス室に送られていく。死と隣り合わせの日常で、幸せを感じることは、本当にできるのでしょうか。
大人は決して手に入らない幸せを求めて必死にあがくが、子どもはその手のなかに幸せを見いだせる。
「アウシュヴィッツの図書係」より
誰もが子ども時代に持っていた、あらゆることに幸せを見出す力。極限状態の強制収容所であっても、子どもたちは日々の中の幸せに気づきます。幸せは遠くにあるように思えても、実のところ近くにある。「青い鳥」を思い起こさせます。
まとめ
教員をやるのであれば、過去の戦争については知っておきたいところです…!
いかがでしたか?「アウシュヴィッツの図書係」は全編を通して、主人公エディタの成長や葛藤が描かれています。そしてその周囲の人物にもスポットが当てられ、それぞれが内に抱える苦悩を知ることができます。孤独や絶望を感じながらも、今を力強く生きるエディタの姿から、きっと得るものがあることでしょう。
アウシュヴィッツの図書係 / アントニオ・g・イトゥルベ 【本】 価格:2,420円 |
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