学級崩壊ってよく聞くけれども、どんな原因で起きているんでしょうか?
自分のクラスが学級崩壊しないか心配です。どんなことに気を付けたらいいんでしょう?
今回はこんな疑問にお答えします。
・教員側の学級崩壊の原因を知りたい人
・学級崩壊を起こしたくない人
・学級経営に興味のある人
学級崩壊、起こしたくないですよね…
学級崩壊には様々な原因があります。
教員側のものもあれば、子どもたちが原因になるものも、そして保護者が原因となるものもあります。
全てに対応することは難しいのですが、それでも教員側の原因を知っておくだけでも、学級崩壊を引き起こす確率はぐっと下がります。
理想とする学級経営に近づくためにも、やってはいけないことを学ぶことは大切です。
結論を先に述べます。
・学級崩壊には子どもたちが原因のものもあるが、教員が原因のものもある
・教員側の原因1:授業が面白くない
・教員側の原因2:子どもたちとの距離感がつかめない
「学級崩壊の原因について知りたい」「教員がやってはいけないことを知りたい」という方はぜひご覧ください!
学級崩壊の原因は、子どもたちか教員か
まず、本記事における学級崩壊を次のように定義します。
「子どもたちが教室内で勝手な行動をして教師の指導に従わず,授業が成立しないなど,集団教育という学校の機能が成立しない学級の状態が一定期間継続し,学級担任による通常の方法では問題解決ができない状態に立ち至っている場合」
いわゆる「学級崩壊」について ~『学級経営の充実に関する調査研究』(最終報告)の概要~ (平成12年3月))より
要約すると「子どもたちが教員の言うことを聞かずに授業やその他教育活動が成立しない状態が長く続いており、もはや担任だけでは問題を解決することができない場合」と言えます。
さて、学級崩壊の原因が子どもたちにあるのか、それとも教員にあるのか。
つまり、子どもたちの質が悪いのか、教員の指導が悪いのか、ということです。
ここは意見が分かれるところです。
子どもたちが勝手な行動をしているのだから、悪いのは子どもたちに決まっている、とも考えられます。
実際、そのようなケースで引き起こされている学級崩壊もあるでしょう。
また、保護者の介入によって学級での教育活動が立ち行かなくなる場合もあるでしょう。
けれども崩壊の大半は、教員の側に原因があると僕は考えています。
もちろん、崩壊させたくて崩壊させている教員などいるはずもありませんので、正しくは「子どもたちに付け入るスキを与えてしまった結果、崩壊に至る」のだと思っています。
子どもたちに付け入るスキを与えてしまった結果、崩壊に至る
一度でも教員として子どもたちの前に立ったことのある人間ならばわかると思いますが、子どもたちはスキを見つける達人です。
あいまいな指示やちょっとしたゆるみが、後々自分の首を絞めることになってきます。
ですから付け入るスキを与えないことが大切なのです。
さまざまな要因からそれができていないとき、学級崩壊への道が開くのだと考えています。
崩壊した学級の実態
それではここで、実際に僕の体験した学級崩壊の実態を紹介していきます。
どちらの場合も僕と同じ学年に所属していた、小学校教員です。
ケース1 新任講師Aの場合
新任講師Aについて
- 大学卒業後、常勤講師として赴任
- 授業がおもしろくない
- 人とコミュニケーションをとることが苦手
Aはそもそも、同僚ともコミュニケーションをとることが難しい人でした。
会話がかみ合わず、話が長く続きません。
もちろん子どもたちとも話をすることができません。
授業はAが黒板を向いて教科書を読みながら板書し、子どもたちはそれをただ見聞きするだけ、というスタイルでした。
子どもたちがおしゃべりしていてもお構いなし。
淡々と授業を進めていきました。
もっとも、やり方がわからなかったのだとは思います。
学級経営に関しては、あいまいな指示をする姿が印象的でした。
例えば「先生、教科書の問題が早くできたので、何をしていればいいですか」という質問に対し「なんでもいいよ」と答えていました。
子どもたちは次第にAと距離を置くようになっていきました。
そして学級は崩壊にいたります。
授業中にも立ち歩き、会話をし、鬼ごっこを始め、紙飛行機を飛ばすといった光景が見られるようになりました。
Aは教卓で静かにするよう指示を出したり、怒鳴ったり、果ては泣いたりしましたが、子どもたちは笑うだけで事態は改善することはありませんでした。
壮絶な崩壊の現場を目の当たりにした僕がAと話したときの、衝撃的な言葉がこちらです。
「僕の知ったことではないですけど、あの子たち、こんなことになっちゃって、この先どうなるんでしょうね。かわいそうだなあって思います」
ああ、この人は他人に興味が無いのだと感じました。
だから子どもたちに響く言葉を届けられなかったのです。
Aは周囲からの助言や支援を、自分への否定だととらえていました。
わからない状況にあっても授業を改善することはなく、子どもたちとコミュニケーションを取ろうとすることもありませんでした。
もちろん、人間には得手不得手があります。
けれども、苦手なことをそのままにしてしまうと、子どもたちに付け入るスキを与えてしまうことになります。
ケース2 ベテラン教諭Bの場合
ベテラン教諭Bについて
- 経験年数20年余のベテラン
- 授業が面白くない
- 子どもたちとの距離が遠い
Bは穏やかな教員でした。
子どもたちに対してもとても丁寧な対応をします。
優しく諭すように指導する姿勢が印象的でした。
ただしその優しさは、子どもたちのことを考えての優しさではなく、子どもたちとの距離が遠いゆえの優しさでした。
言い換えれば他人行儀でした。
子どもたちが良くない行動をしても、それを止めることができない。
例えば悪口を言っている子どもに対して「だめだぞー」と言いながら教室を出ていってしまう。そんな教員でした。
子どもたちはやがてBが「何をしても強くとがめることのできない」教員であると見抜き、やりたい放題の行動に出ます。
授業中、Bが話していても立ち歩く、教室から出ていく、寝る、大声で叫ぶ…といった行動をとるようになりました。
それでもBは声を荒らげることなく「だめだぞー」と繰り返しながら授業を続けていました。
それは異常な光景でした。
授業を聞いているのは1~2人、そのほかは好き勝手に様々なことをやっています。
それなのに慌てることもせず、淡々と授業を行うB。
まさしく「崩壊」と呼ぶにふさわしい状態でした。
崩壊に至った原因には、子どもたちへの指導を毅然と行えなかったこともありますが、前提として、授業が面白くないこともあります。
Bの行う授業は教科書を音読し、板書をし、それを子どもたちがただノートに書き写すというものでした。
崩壊を引き起こす教員に共通すること
以上、2つの事例を紹介しました。これらから、学級崩壊を引き起こす教員の共通点を見出してみましょう。
学級崩壊を引き起こす教員の共通点
①授業が面白くない
②子どもたちとの距離感がつかめない
①授業がおもしろくない
授業が面白くないことは、教員にとって致命的です。
教員の本業は授業を中心とした学習指導ですから、その専門性を高めなくてはなりません。
とはいえ、経験年数が浅く、どうしたら面白い授業になるのかわからない、という方もいらっしゃることでしょう。
まずは教材研究に時間をかけることです。
どんな教材にも面白さや味わい深さがあります。
自分自身がそのうま味に気づいていなければ、子どもたちも気づくことはありません。
教材研究とはそのうま味を探すために行うのです。
そんなことわかってますよ。でも時間がないんですよ。
そう思った方、いますよね。
その通りだと思います。
現在の教員に課せられる仕事量は暴力的ですので、授業の準備にあてられる時間はほとんどありません。
それでも、何とか時間を捻出して授業を面白くしたいものです。
教員の本職は授業です。
いくら話が面白くても、休み時間に一緒に遊んでいても、それは根本的な解決にはなりません。
授業が面白くない教員は、子どもたちを惹きつけることができません。
子どもたちが学校で過ごすのは8時間弱。そのうちおよそ5時間を占めるのは、授業です。
授業が面白くないことは、教員として致命的です。
子どもたちにとって5時間も退屈な時間を与えられるのは拷問に近く、反発が起こるのもごく自然なことです。
まずは教材研究にかける時間を捻出しましょう。
部活動顧問を引き受けている方は、顧問を拒否することも考えてみましょう。
部活動は教育課程外です。
②子どもたちとの距離感がつかめない
子どもたちとどのような距離感で接したらいいのか?
それは教員にとって永遠のテーマとも言える問題です。
「教員によって最適な距離感が違う」「子どもによって最適な距離感が違う」ことも、現場にいると肌で感じることです。
一朝一夕で身につくものではなく、失敗を繰り返しながら自分の最適解を探し出すしかありません。
しかしその過程で「失敗」することを過度に恐れてしまうと…この距離感を体得することなく経験年数を重ねてしまうことになるでしょう。
「真の失敗」とは「挑戦しないこと」です。
たとえうまくいかなかったとしても、それは「うまくいかない方法を発見した」ということです。
挑戦しなければ、それすらわかりません。
傷つくかもしれませんし、恥をかくかもしれません。
それでも、挑戦しなくては何も変わりません。
うまくいかない方法を見つければ見つけるほど、自分の引き出しも増えるというものです。
「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」 ー トーマス・エジソン ー
結論:専門性を高め、魅力的な教員になろう!
それでは今回の結論です。
・学級崩壊には子どもたちが原因のものもあるが、教員が原因のものもある
・教員側の原因1:授業が面白くない
・教員側の原因2:子どもたちとの距離感がつかめない
つまり、教員としての専門性を高めること、そして教員の人間としての魅力を高めることが、教員側に原因のある学級崩壊を防ぐ手立てとなります。
「専門性×人間力=魅力的な教員」になることが、学級崩壊を防ぐ手立てとなる
学級崩壊はいつでもどこでも起こり得るものです。
新人であろうとベテランであろうと、崩壊するときは崩壊します。
様々な要因が絡み合って起こるものですから「これだけが原因だ」と特定できるわけではありませんが、少なくとも教員側の原因を減らすことはできます。
「授業」と「距離感」は大切ですよ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、良い教員ライフを!
コメント
コメント一覧 (3件)
崩壊の要因として一つ追加してもらえるでしょうか。
「同僚、学年団、管理者が助けない」
私の経験としては、教員が大したことなくても、崩壊がおこるかというとおこらないことのほうが多いです。また教員の要因よりも、児童の発達の問題、家庭環境等の要因で起こるように思います。
TTで複数の学校で担任の支援する立場でしたが、ある学校ではいろんなクラスで崩壊していました。クラス替えをしても意味なくどこかが崩壊するありさまでした。校長が無策で、担任は休職においやられました。その校長の異動後、新しい校長の様々な対策提案により、崩壊が収まった事例があります。崩壊してても、担任があれこれ職員室で言い合える環境であれば、その先生も耐えられます。周囲が「おかしいな」と思ったら、担任だけでなくいろんな先生が、そのクラスに牽制をかけるだけでも、児童の反応が変わる印象です。それを、あの学級は崩壊しているけど、自分が指導にいけば好かれてるし、落ち着いているとか自己満の先生ばかりが周囲にいる場合、ますます崩壊しているなあと感じています。
なな様
コメントありがとうございます。
「同僚、学年団、管理者が助けない」ということも崩壊の原因として可能性があるものですね。
記事内でも書いている通り、学級崩壊は様々な要因が重なって起きるものだと認識しています。
教員、子ども、保護者、学年団、管理職…その中でも教員側が気を付けることができるものとして本記事を書きました。
その点についてはご理解ください。
自己満足な教員が多いほどに崩壊が進んでいく、という指摘については同意見です。
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