「措置要求」という言葉を聞いたのですが、これって何ですか?
今回はこんな疑問にお答えします。
・措置要求について知りたい人
・職場の環境を変えたい人
・自分が不当な労働環境に置かれていると感じている人
Twitterなどで労働環境が良くない、と訴えると、「措置要求をしてはどうか」とすすめられる場合があります。
あまり聞きなじみのない言葉だと思います。
どんなものなのか?
出したら何が変わるのか?
出すにはどうしたらいいのか?
先に結論を書いておきます。
・措置要求は公務員の権利
・労働条件の改善を求めることができる
・例え「棄却」であったとしても、十分な脅威になる
「職場の環境を変えたい」と思っている人、「自分が不当な労働環境に置かれている」と感じている人はぜひ参考にしてみてください!
措置要求とは
措置要求の根拠となるのは、地方公務員法の第四十六条です。
地方公務員法より
第四十六条 職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会又は公平委員会に対して、地方公共団体の当局により適当な措置が執られるべきことを要求することができる。
第四十七条 前条に規定する要求があつたときは、人事委員会又は公平委員会は、事案について口頭審理その他の方法による審査を行い、事案を判定し、その結果に基いて、その権限に属する事項については、自らこれを実行し、その他の事項については、当該事項に関し権限を有する地方公共団体の機関に対し、必要な勧告をしなければならない。
第四十八条 前二条の規定による要求及び審査、判定の手続並びに審査、判定の結果執るべき措置に関し必要な事項は、人事委員会規則又は公平委員会規則で定めなければならない。
兵庫県のHPにわかりやすい解説がありましたので引用します。
勤務条件に関する措置の要求とは、職員が、地方公務員法第46条の規定により、給与、勤務時間その他の勤務条件に関して当局が適当な措置を執るよう、人事委員会に要求できる制度です。
公務員には、労働協約締結権を含む団体交渉権、争議権が認められないなど、労働基本権が制限された代償として、その地位に基づく経済上の権利を確保するための制度が設けられています。
人事委員会は、措置要求があった場合、口頭審理その他の方法でその内容を審査し、判定を行い、人事委員会の権限に属する事項については自ら実行し、当局の権限に属する事項については、当局に対してこれを実行させるため、適切な措置をするよう勧告をすることとなっています(同法第47条)。また、関係当事者間に自主的な解決をあっせんすることもあります。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ji01/29kinmu.html
こちらにあるように、公務員は労働者に認められるはずの労働基本権が制限されています。
それは、例えば公務員がストライキを起こしてしまうと国民の生活が成り立たなくなる恐れがあるからです。
教員が全員、学校に来なかったらそれだけでパニックですよね。
そのため、公務員は労働基本権が制限された状態にあります。
本来、労働基本権は労働者が使用者に対抗する手段として保障されている、労働者の権利です。
公務員の場合はそれが制限されているため、代わりに措置要求を行うことができます。
地方公務員から出された措置要求を故意に妨げることに対しては罰則が定められているあたり、この措置要求が非常に重く扱われていることがわかります。
第六十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第五十条第一項に規定する権限の行使に関し、第八条第六項の規定により人事委員会若しくは公平委員会から証人として喚問を受け、正当な理由がなくてこれに応ぜず、若しくは虚偽の陳述をした者又は同項の規定により人事委員会若しくは公平委員会から書類若しくはその写の提出を求められ、正当な理由がなくてこれに応ぜず、若しくは虚偽の事項を記載した書類若しくはその写を提出した者
二 第十五条の規定に違反して任用した者
三 第十八条の三(第二十一条の四第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して受験を阻害し、又は情報を提供した者
四 削除
五 第四十六条の規定による勤務条件に関する措置の要求の申出を故意に妨げた者
措置要求ができる職員は、次の図の通りです。
教員は「教育公務員」に該当しますので、教諭はもちろんのこと、条件附採用や臨時的任用のいわゆる講師の方も措置要求を出すことができます。
学校で働き方に困ったら出せる、と覚えておきましょう!
措置要求で変えられること
措置要求が結構すごい力を持っていることはわかりましたが、結局何が変えられるのですか?
東京都の人事委員会の公式HPにこのような文がありましたので、引用します。
(1)措置要求の対象となる事項
措置要求の対象となる事項は職員自身の勤務条件に関するものであって、当局の措置によって維持・改善ができるものでなければなりません。(地公法46)
具体的には、次の事項が措置要求の対象となります。
① 給与、勤務時間、休憩、休日及び休暇に関する事項
② 労働に関する安全及び衛生に関する事項
③ 執務環境、福利厚生等に関する事項(2)措置要求の対象とならない事項
ア 勤務条件に該当しないもの
イ 地方公共団体の管理運営事項に該当するもの(規則8③)
① 地方公共団体の組織に関する事項(例 事業場の改廃)
② 行政の企画、立案及び執行に関する事項
③ 予算の編成及び執行に関する事項
④ 議案の提案に関する事項(例 定数条例の改廃)
⑤ 職員定数の決定及び配分に関する事項(例 定数配置の変更)
⑥ 任命権の行使に関する事項(例 採用、服務規程)
ウ 地方公共団体の権限に属さないもの
https://www.saiyou.metro.tokyo.lg.jp/sochiyoukyuu.html
措置要求の対象となるのは、大きく3つです。
① 給与、勤務時間、休憩、休日及び休暇に関する事項
② 労働に関する安全及び衛生に関する事項
③ 執務環境、福利厚生等に関する事項
①については、例えば時間外勤務の部活動顧問を強制されていたり、休憩時間に会議や研修を入れられていたりした場合に、その是正を求めることができます。
②については、例えば蛍光灯を教員が脚立を使って交換していたり、教員がトイレ掃除を行っていることなどが挙げられるでしょう。
③については、労働する環境そのものに対して是正をもとめることができます。
具体的な例をいくつか挙げておきます。
実際の事例などについてはこちらのページが大変わかりやすく、かつ詳しくまとめてありますので、ぜひ参考にしてください。
措置要求の手続きの流れ
それではこの措置要求、実際にどう出したらいいのでしょうか。
まずは自分の勤務する自治体のHPを見てみましょう!
都道府県のHPには、措置要求に関する内容が掲載されています。
そちらにこのような様式もあり、ダウンロードすることができます。
流れとしては、次のようになります。
措置要求書が受理されると、「却下」「棄却」「認容」の3パターンの結果が出ます。
措置要求の「却下」
「却下」は要求が適当ではないとみなされた、ということです。
当然、管理職との応答も発生しないため、自分が問題だと感じている事態の改善には至りません。
なぜ「却下」となったかの理由については教えてもらえるので、その理由を改善してもう一度提出をしてみましょう。
措置要求の「棄却」
多くの場合、この「棄却」となるようです。
残念ながら要求が認められたわけではありませんが、管理職にも通知がいきますし、何よりも「却下」でなければ、その内容を審議してもらえます。
「棄却」という結果が出るまでの間に教育委員会や人事委員会との面談がある場合もあります。
管理職にとっては自身の管理能力を問われることにもなり、不利益になるわけです。
したがって、「棄却」されるまでの間に、管理職から「措置要求を取り下げてほしい」という提案をされることも十分あり得ます。
措置要求が「認容」されればそれに越したことはないのですが、結果として「棄却」であったとしても十分に意味があるといえるでしょう。
措置要求の「認容」
これは措置要求が成功したといえるでしょう。
自分が問題だとしていることが認められ、改善しなくてはならないと人事委員会が認定した、ということです。
結論:措置要求は出すことに意味がある
今回の結論です。
・措置要求は公務員の権利
・労働条件の改善を求めることができる
・例え「棄却」であったとしても、十分な脅威になる
措置要求は闘う労働者を応援するための制度です。
管理職に交渉しても、取り付く島もないことがあります。
こちらに理があることでも、交渉に応じてもらえないこともあるでしょう。
そんなとき、泣き寝入りすることなく、闘っていきましょう!
闘わずして権利を勝ち取ることはできません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、良い教員ライフを!
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