「主体的・対話的で深い学び」って、何ですか?
今回はこんな疑問にお答えします。
・「主体的・対話的で深い学び」について詳しくなりたい人
・「主体的・対話的で深い学び」をどう取り入れたらいいか迷っている人
学習指導要領が改訂され、新たな目玉として盛り込まれたのが「主体的・対話的で深い学び」です。
今回の記事では、社会科を例に挙げながら、新学習指導要領のねらいとそのための授業づくりについて考えていきたいと思います。
先に結論を書いておきます。
・子どもたちに学びたいと思わせる
・子どもたちに対話させ思考を促す
・その上で見方・考え方を働かせる
「主体的・対話的で深い学び」について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください!
主体的な学び: 「学びたい」と思わせることができるか
小学校学習指導要領解説総則編及び中学校学習指導要領解説総則編では、主体的な学びについて次のように解説されています。
学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているかという視点
小学校学習指導要領解説総則編
うーん、わかるようなわからないような…
いまひとつイメージしづらいですよね。
国立教育政策研究所の資料には、次のような図があります。
学習者、つまり子どもたちは学ぶことに興味や関心をもったり、粘り強く取り組んだりする。
そのような学習に対する姿が「主体的に学んでいる姿」であると言えるでしょう。
また、教員側の手立ても示されています。
資料では具体物を提示したり、子どもたちが自ら学習に取り組むような支援が必要であるとされています。
教師が知識を教え込むのではなく(もちろんこういった授業も必要ですが)、子どもが自ら意欲的に、主体的に学ぼうとしていくことが大切であるといえるでしょう。
中国のことわざに「馬を水辺まで連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」というものがあります。
子どもたちを力で机に向かわせることは、私たち大人にはできます。
しかし真の意味で学ばせることは、強要することができません。
子どもたちが学ぶためには、子どもたち自身が「学びたい」と思うことが絶対に必要です。
教師の視点で言い換えれば、いかに「学びたい」と思わせることができるか、ということです。
ここに主体的な学びへの入り口があるでしょう。
子どもたちに「学びたい」と思わせるためには、工夫が必要です。
- 教員が教材を十分に研究していること
- 教員が教材に対して関心をもっていること
- 子どもと教材の出合いに工夫があること
このあたりに気を配りたいところです。
経験上、教師が「面白い!」と思っている教材には、子どもたちの食いつきも良いです。
やっぱり教師が楽しんで授業をすると、その姿勢は伝わりますよね。
教材研究については別の記事にまとめてありますので、参考にしてください。
対話的な学び:対話を通して学ばせようとしているか
小学校学習指導要領解説総則編及び中学校学習指導要領解説総則編では、対話的な学びについて次のように解説されています。
子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているかという視点。
小学校学習指導要領解説総則編
うーん、わかるようなわからないような…
いまひとつイメージしづらいですよね。
国立教育政策研究所の資料には、次のような図があります。
子どもたちは協働や対話を通じて、自己の考えを広げたり深めたりする。
そのような学習に取り組む姿が、「対話的に学んでいる姿」といえるでしょう。
教員側の手立てとしては、思考を交流させたり、協働させたり、板書で学びを引き出したりすることが示されています。
教員が一方的に知識を伝えるのではなく、子どもたちが子どもたち同士、あるいは教員と、あるいは資料や先哲の考えに触れながら、対話を通して学ぶ姿。
それが「対話的な学び」です。
このうち、最も重要なのが子ども同士の対話的な学びでありましょう。
同輩との対話による学びは、彼らの生きていく力を伸ばすものでもあるはずです。
では、子ども同士の対話を行うためには…?
健全な人間関係が築かれていることが前提となります。
そのためには、学級づくりが文字通り学ぶための土台として、理解されていく必要があります。
学級集団は、仲良しこよしである必要はありません。
しかし、子ども同士が対話できる状態であること。
共通の目標に向かって、行動できる集団であること。
この状態を作るために、学級経営はあるのだと思います。
授業をうまくしたいと思ったら、まずは学級経営から。
そこに、対話的な学びのヒントが隠されていると思います。
学級経営については別の記事にまとめてありますので、よろしければ参考にしてください。
深い学び:「見方・考え方」を働かせた教材研究ができているか
小学校学習指導要領解説総則編及び中学校学習指導要領解説総則編では、深い学びについて次のように解説されています。
習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているかという視点。
小学校学習指導要領解説総則編
うーん、わかるようなわからないような…
いまひとつイメージしづらいですよね。
国立教育政策研究所の資料には、次のような図があります。
「見方・考え方」を働かせ、知識を関連付けたり、問題を見出したりすること。
そのように学習に取り組む姿が、「深い学び」の姿であるといえるでしょう。
ここでいきなり出てきた「見方・考え方」とは、どのようなものなのでしょうか。
平成28年の「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」では次のように述べられています。
子供たちは、各教科等における習得・活用・探究という学びの過程において、各教科等で習得した概念(知識)を活用したり、身に付けた思考力を発揮させたりしながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう。こうした学びを通じて、資質・能力がさらに伸ばされたり、新たな資質・能力が育まれたりしていく。
その過程においては、“どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか”という、物事を捉える視点や考え方も鍛えられていく。こうした視点や考え方には、教科等それぞれの学習の特質が表れるところであり、例えば算数・数学科においては、事象を数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、論理的、統合的・発展的に考えること、国語科においては、対象と言葉、言葉と言葉の関係を、言葉の意味、働き、使い方等に着目して捉え、その関係性を問い直して意味付けることなどと整理できる。こうした各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方が「見方・考え方」であり、各教科等の学習の中で働くだけではなく、大人になって生活していくに当たっても重要な働きをするものとなる。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf
このように、各教科ならではの物の見方や捉え方、それが「見方・考え方」です。
ありますよね、それぞれの教科での考え方。
社会なら、僕自身は「つながり」がそれにあたると思います。
例えばペリー来航という社会的事象があります。
この事象を単体で見るのではなく、さまざまな他の事象と関連付けて、つまりは「つながり」をもって見るのです。
歴史的には…そもそも鎖国を行っていた・キリスト教(カトリック)との関係・次の明治維新、および一連の戦争につながる。
地理的には…産業革命は海を越える力をアメリカに与えた・中国とアメリカとの貿易関係
などなど、別のこととつながってきます。
これこそ、社会科の「見方・考え方」であると考えます。
この「見方・考え方」を働かせて考えること、それこそが「深い学び」といえるでしょう。
各教科の一覧はこちらにまとめてありますので、良ければ参考にしてください。
さて、「主体的・対話的で深い学び」ということは、「主体的・対話的」とはあくまでも手段であり、その手段を用いることで、深い学びに到達することができる…ということです。
子どもたちが主体的に学び、対話的に学び、そんな活動の中に「見方・考え方」を働かせると、深い学びへと到達する…そんなイメージです。
めっちゃくちゃ難しくないですか?
ええ…同感です。
少なくとも、教科書をただ読むだけの授業では「主体的・対話的で深い学び」には全く到達することはないでしょう。
子どもたちが主体的・対話的に学ぶような手立てを、我々は講じていく必要があります。
同時に、教員自身が「見方・考え方」を働かせて教材研究を行うことで、子どもたちが深い学びへとたどり着くことを支援しなくてはなりません。
やるぞ、と思う一方で、そんな時間がどこにあるんだ、とも思います。
圧倒的な業務量を少しでも自分で減らすことで、教材研究の時間を確保することが先決かもしれません。
結論:主体的な学び+対話的な学び+見方・考え方=深い学び
今回の結論です。
・子どもたちに学びたいと思わせる
・子どもたちに対話させ思考を促す
・その上で見方・考え方を働かせる
時間をどうやって捻出するかはおいておくとして、かなり大変なことを要求されています。
子どもたち自身が学びたいと思うように教材と出合わせ、対話できるだけの学級経営を行い、見方・考え方まで網羅しなくてはいけません。
いきなりすべてを変えることはできませんから、まずは自分の授業でできることを変えていきましょう。
少しずつでも目標に向かって進んでいけば、いつかはたどり着くはずです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、良い教員ライフを!
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