「個別最適な学び」って何ですか?
今回はこんな疑問にお答えします。
・「個別最適な学び」について詳しく知りたい人
・「個別最適な学び」に基づいた教育活動を考えたい人
学校では、よく「個別最適な学び」について求められます。
字から何となくの意味を想像することはできますが、一体どんなことを意味しているのでしょうか。
実は「主体的・対話的で深い学び」とも関係があります。
「個別最適な学び」について詳しくなれば、きっと日々の授業も改善されていきます。
先に結論を述べておきます。
「個別最適な学び」について詳しく知りたい人や考えたい人は、ぜひ参考にしてみてください!
個別最適な学び=指導の個別化+学習の個性化
「個別最適な学び」について、中央教育審議会は次のような答申を出しています。
全ての子供に基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させ、思考力・判断力・表現力等や、自ら学習を調整しながら粘り強く学習に取り組む態度等を育成するためには、教師の支援が必要な子供により重点的な指導を行うことなどで効果的な指導を実現することや、子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うことなどの「指導の個別化」が必要である。
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(令和3年 中央教育審議会)より
えっと…?
子どもたち一人ひとりの実態に合わせて、学習のやり方などを変えてあげてねって言ってます!
基礎的・基本的な知識・技能等や、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力等を土台として、幼児期からの様々な場を通じての体験活動から得た子供の興味・関心・キャリア形成の方向性等に応じ、探求において課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現を行う等、教師が子供一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、子供自身が学習が最適となるよう調整する「学習の個性化」も必要である。
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(令和3年 中央教育審議会)より
う~んと…?
実態に合わせて、どうやって学習を進めていけばいいかを子どもたち自身に考えさせてねって言ってます。
なかなか難解ですね…
「指導の個別化」と「学習の個性化」については、下でそれぞれ解説を加えますね!
さて、これらの中央教育審議会の答申を引用したうえで、文科省は次のように述べています。
「指導の個別化」と「学習の個性化」を学習者視点から整理した概念が「個別最適な学び」ですが、これを教師視点から整理した概念が「個に応じた指導」です。学習指導要領の総則では「児童(生徒)の発達の支援」の項目において、「個に応じた指導」の充実を図ることについて示しています。「個に応じた指導」にあたっては、「指導の個別化」と「学習の個性化」という二つの側面を踏まえるとともに、ICTの活用も含め、児童生徒が主体的に学習を進められるよう、それぞれの児童生徒が自分にふさわしい学習方法を模索するような態度を育てることが大切です。
学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料(令和3年 文部科学省初等中等教育局教育課程課)より
…(チーン)
「個に応じた指導」について考えるときには、「指導の個別化」と「学習の個性化」の二つの側面があることを忘れないでねって言ってます。
このように、「個別最適な学び」について考えるためには、「指導の個別化」と「学習の個性化」の二つの側面についてそれぞれ知る必要があります。
それぞれについて、順に詳しく解説していきますね。
指導の個別化とは、子ども自身が効果的な学習方法を考えること
さて、上の引用をもう一度出しましょう。
全ての子供に基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させ、思考力・判断力・表現力等や、自ら学習を調整しながら粘り強く学習に取り組む態度等を育成するためには、教師の支援が必要な子供により重点的な指導を行うことなどで効果的な指導を実現することや、子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うことなどの「指導の個別化」が必要である。
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(令和3年 中央教育審議会)より
文科省の資料には、次のような文言も出てきます。
「指導の個別化」は一定の目標を全ての児童生徒が達成することを目指し、個々の児童生徒に応じて異なる方法等で学習を進めることであり、その中で児童生徒自らの特徴やどのように学習を進めることが効果的であるかを学んでいくことなども含みます。…(中略)…児童生徒が自らの状態を様々なデータも活用しながら把握し、自らに合った学習の進め方を考えることができるよう、教師による指導を工夫していくことが大切です。
学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料(令和3年 文部科学省初等中等教育局教育課程課)より
これらの情報をもとにしながら、以下の2つの視点で解説をしていきます。
子どもの視点から
子どもたち自身に求められる姿として、次のようなものがあります。
- 自らの特徴について学ぶこと
- どのように学習を進めることが効果的であるかを学ぶこと
大まかに言えば、子どもたちが自分自身についてメタ認知する必要がある、ということでしょう。
自分はどんな人間なのか。
何が得意で、何が苦手なのか。
どんな方法なら学習の効率が上がるのか。
そういったことがらを、自分自身で何度も問い直す必要があります。
例えば、ある資料をもとにして自分の意見をまとめる授業があったとしましょう。
授業の終わりに、子どもたちはこのように考えているでしょうか。
本当にその方法でまとめて良かったのか?もっといい方法があったのではないか?
そのような姿が見られたのであれば、少なくとも「個別最適な学び」の中の「指導の個別化」についてはクリアできていると言えるでしょう。
教員の視点から
さて、では上のような子どもたちの姿を引き出すには、どうしたらいいのでしょうか。
文科省はこのように述べています。
…(前略)…児童生徒が自らの状態を様々なデータも活用しながら把握し、自らに合った学習の進め方を考えることができるよう、教師による指導を工夫していくことが大切です。
学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料(令和3年 文部科学省初等中等教育局教育課程課)より
要するに子どもたちが「自分に合った学習の進め方を考えることができる」ような、ナイスな方法を現場の教員が考えて実行してねってことです。
ええ~…
まあ、いつものことです。
私見ですが、僕は次の2つに留意することで、子どもたちが自分に合った学習の進め方を考えていけると思っています。
(私見)子どもが学び方を考え、振り返る場面の設定が必要
- 子どもたちが自由に学び方を考える場面を設定すること
- そのうえで自分の学びを振り返らせること
自分に合った学習の進め方なんて、とにかく試行錯誤しなきゃ見つかりません。
授業にせよ宿題にせよ、教員が「この方法でやりなさい」と言っている限り、そんなことは不可能です。
ですから、まずは子どもたちが自由に学び方を考え、実行できる場が必要です。
しかし、やりっぱなしでは意味がありません。
自分の選んだ学び方が本当に効果的だったのか。
自分に合っていたのか。
その視点で自分の活動を振り返り、メタ認知を深めること。
以上の2つが、「指導の個別化」には絶対に欠かせないと思います。
学習の個性化とは、子どもが自分の目指す姿を見据えること
こちらも、上の引用をもう一度出します。
基礎的・基本的な知識・技能等や、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力等を土台として、幼児期からの様々な場を通じての体験活動から得た子供の興味・関心・キャリア形成の方向性等に応じ、探求において課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現を行う等、教師が子供一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、子供自身が学習が最適となるよう調整する「学習の個性化」も必要である。
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(令和3年 中央教育審議会)より
さらに文科省は、次のように述べています。
「学習の個性化」は個々の児童生徒の興味・関心等に応じた異なる目標に向けて、学習を深め、広げていくことを意味し、その中で児童生徒自らどのような方向性で学習を進めていったら良いかを考えていくことなども含みます。…(中略)…児童生徒がこれまでの経験を振り返ったり、これからのキャリアを見通したりしながら、自ら適切に学習課題を設定し、取り組んでいけるよう、教師による指導を工夫していくことが重要です。
学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料(令和3年 文部科学省初等中等教育局教育課程課)より
これらの情報をもとにしながら、以下の2つの視点で解説をしていきます。
子どもの視点から
子どもたち自身に求められる姿としては、次のようなものがあります。
- 自らどのような方向性で学習を進めていけば良いかを考える
- 自分の学習が最適となるよう調整する
大まかに言えば、子どもたちが「自分は何になりたいのか」「自分の目標は何か」といったことを考えている必要があるでしょう。
自分の目指すべきところはどこで、そのために今は何をしなくてはいけないのか、という発想です。
そして目標を達成するために、自分の学習が最適なものになるよう、方法や時間を調整します。
目標設定についていえば、単元を通して身に着けたい力を自分で考えることができるかどうか、といった話になるでしょう。
そしてそのために単元の時間内でどのような学習方法をとるとよいか考え、実際に調整するということですね。
いずれにせよ「指導の個別化」でのメタ認知をもとにして、さらに未来の目標設定まで求められていると言えるでしょう。
教員の視点から
さて、では上のような子どもたちの姿を引き出すには、どうしたらいいのでしょうか。
文科省はこのように述べています。
…(前略)…児童生徒がこれまでの経験を振り返ったり、これからのキャリアを見通したりしながら、自ら適切に学習課題を設定し、取り組んでいけるよう、教師による指導を工夫していくことが重要です。
学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料(令和3年 文部科学省初等中等教育局教育課程課)より
要するに子どもたちが「自分で適切な学習課題を設定できる」ように、いろいろ考えていい感じに指導してねってことです。
抽象的すぎてちんぷんかんぷんです。
平常運転ですね。
こちらでも私見を述べます。
僕は次の2つに留意することで、子どもたちが自分に合った学習の進め方を考えていけると思っています。
(私見)テストでの目標を設定し、結果から考える
- テストでの目標点数をあらかじめ設定させること
- テストの結果から、自分の取り組みを振り返り、次の目標を設定すること
テストでの目標設定が「学習の個性化」には適切だと思います。
それは比較的近い未来の目標を設定し、そのたびに自分の取り組みを振り返ることができるからです。
テストでの目標点を自分で設定し、その結果から自分の取り組みを振り返ること。
そして、その次の目標をまた自分で設定すること。
この繰り返しによって、子ども自身が「学習の個性化」で求められる力をつけることができるでしょう。
あれ、これって「けテぶれ」と相性いいんじゃ…!?
ここまで読んでくださった方の中には「あれ、これってけテぶれだよね…?」と思われた方もいることでしょう。
僕自身、「個別最適な学び」が目指すものは葛原先生の「けテぶれ」と大変相性がいいことに気づきました。
上で挙げた具体的な私見は、けテぶれでの子どもたちの活動をイメージしています。
でも「個別最適な学び」って授業の中でやることなのでは?
いえいえ、文科省はこうも言っています。
学校の授業以外の場における学習の習慣や進め方についても視野に入れ、指導を行うことが重要です。
学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料(令和3年 文部科学省初等中等教育局教育課程課)より
つまり、宿題での「個別最適な学び」についても否定してはいないのです。
「個別最適な学び」に関心がある方は、ぜひ「けテぶれ」についても学んでみて下さい。
子どもたちの学びがどんどん深まっていきますよ。
結論:メタ認知を通して、子ども自身が最適な学びを模索すること
それでは、今回の結論です!
・「個別最適な学び」とは「指導の個別化」と「学習の個性化」の2つに分けられる
・「指導の個別化」とは、子どもたち一人ひとりに合わせて学習方法や教材などを設定すること
・「学習の個性化」とは、子どもたちそれぞれが自分の目標に向けて学習を深め広げること
「主体的・対話的で深い学び」とも関連する「個別最適な学び」。
効果はあるとわかっているけれども、多忙な毎日です。
子どもたち一人ひとりに合わせた活動をこちらが準備するのは大変ですよね。
だからこそ「けテぶれ」はおススメです。
子どもたち自身が目標を設定し、活動を最適化していくための手段となり得ます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、良い教員ライフを!
コメント
コメント一覧 (5件)
はじめてコメントを書かせていただきました。
わかりやすく解説いただき、勉強になります。
ありがとうございます。
主体的・対話的で深い学びを意識するようになって、数年が経ちましたが、最近思うことがあります。
主体的・対話的で深い学びが成立するための子供たちに必要な資質・能力みたいなものはあるのでしょうか。主体的・対話的で深い学びが手段だととらえるとすれば、それまでなのですが、、、
神邉さん、コメントありがとうございます。
主体的・対話的で深い学びに必要な資質・能力について現時点での私の見解を述べます。
主体的な学びに関しては「学ぶことに対して否定的でないこと」が重要だと思います、教育現場に身を置いていると、様々な要因で学ぶことに否定的になっている子に出会います。まずは学んでみよう、と思えることが前提ではないかと考えます。
対話的な学びに関しては「人とコミュニケーションがとれること」「資料を読み取る力」などがあるでしょうか。対人的な学びはもちろん、資料からの学びも想定されていますので、これらは必要だと思います。
深い学びに関しては「各教科の見方や考え方を念頭に置いて事象をとらえる力」が必要になるでしょう。これだけかなり高度な能力を必要とされているように感じます。そのための手立てを考えていくことも大切ですね。
早速、ありがとうございます。
やはり、子ども自身がもっている資質・能力によって、学びの質が変わってきてしまうわけですかね。ということは、やはり、教師が「主体的・対話的で深い学び」が実現するための土台自体も育成していく必要があるということになりますでしょうか。
実は、私の周りで、主体的・対話的で深い学びを実現するための土台みたいのがあるのか、あるとするなら、発達段階的にどこで、どのようにそれを子供は身につけてくるのか。そんな疑問を投げかけられて、いろいろと調べていたところです。
お時間をとらせてしまい、申し訳ありません。ありがとうございました。
ええ、そうなるのではないかと考えています。ただ、土台となる力は授業の中ではなく、むしろ子どもたち同士の関わりの中で育まれるのではないかとも感じています。つまり、学級経営の中で「主体的・対話的で深い学び」の土台となる力を育てることができるのではないか、ということです。相手を尊重する態度であったり、思いを伝えたい・伝えても大丈夫という安心感などが土台となるのではないでしょうか。
コメントをいただく中で、私自身もさらに深く考えることができたと思います。機会をいただき、ありがとうございました。
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