「主体的な学び」って結局どんなことなんですか?
今回はこんな疑問にお答えします。
・主体的な学びについて詳しくなりたい人
・「主体的・対話的で深い学び」について知りたい人
主体的・対話的で深い学びについてはこちらの記事で解説しています。
そもそも主体的な学び、とはどんなものなのでしょうか。
どうしたら、子どもたちが主体的に学ぶようになるのでしょうか。
またそれは、主体的・対話的で深い学びに対してどうかかわってくるのでしょうか。
結論を先に結論を書いておきます。
・主体的=自分から行動すること
・子どもたちを主体的にするには、適切な支援が必要
・子どもたちの活動を軸にして授業を展開しよう
「主体的な学び」について知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください!
「主体的」=自分で行うこと
「主体的」という言葉が教育現場ではさかんに使われています。
今回の学習指導要領改訂の目玉である、「主体的・対話的で深い学び」にもまた、「主体的」の文字が盛り込まれています。
ではそもそも、「主体的」とはどういう意味なのでしょうか?
「主体的」の意味(goo辞書)
自分の意志・判断に基づいて行動するさま
ここから、子どもたちが「主体的」に学ぶためには、子どもたちの意志や判断がどのような状態にあるか、が重要になるでしょう。
端的に言えば、「学びたい」「学ぶ必要がある」という子どもたちの思いを、我々教育者が引き出すことができるかどうかが大きなポイントとなりそうです。
学習指導要領での解説
小学校学習指導要領解説総則編及び中学校学習指導要領解説総則編においては、次のような解説がなされています。
学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているかという視点。
小学校学習指導要領解説総則編及び中学校学習指導要領解説総則編より
この文章から読み取れることを考えてみましょう。
「興味や関心をもつ」「見通しをもつ」「学習活動を振り返る」といった言葉は、子どもが主語となっています。
まさに、子どもたちが「主体的」に「興味や関心をもつ」「見通しをもつ」「学習活動を振り返る」といった行動をしたいと思っているかどうか、する価値があると判断しているかどうかが重要だということです。
これを教員の立場から考えるのならば、子どもたちに「主体的」に「興味や関心をもつ」「見通しをもつ」「学習活動を振り返る」といった行動をしたいと思わせることができるかどうか、する価値があると判断させることができるかどうかが重要だということです。
子どもたちを「主体的」に学ばせるには?
それでは、子どもたちが「主体的」に「興味や関心をもつ」「見通しをもつ」「学習活動を振り返る」といった行動をしたいと思ったり、する価値があると判断したりするためには、一体どのようなことが必要になるのでしょうか。
国立教育政策研究所からは、学習者(子ども)が改善すべき項目と、授業者(教員)が改善すべき項目が紹介されています。(https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/r02/r020603-01.pdf)
学習者(子ども)が改善すべき項目(同上より)
- 学ぶことに興味や関心を持つ
- 見通しをもつ
- 粘り強く取り組む
- 自己のキャリア形成の方向性と関連付ける
これらの項目は、子どもたちが自ら改善すべきことではありますが、当然ながら子どもたちは未熟なために、授業者(教員)が支援しなくてはなりません。
そこで、授業者が改善すべき項目として、次のようなものが挙げられています。
授業者(教員)が改善すべき項目(同上より)
- 既習事項を振り返る
- 具体物を提示して引きつける
- 子供が自らめあてをつかむようにする
- 子供が自分の考えを持つようにする
- 子供の思考を見守る
- 子供の思考に即して授業展開を考える
- 子供の考えを生かしてまとめる
これらができていれば、子どもたちは「主体的」に「興味や関心をもつ」「見通しをもつ」「学習活動を振り返る」といった行動をしたいと思ったり、する価値があると判断したりすることができるでしょう。
さて、授業の中でこれらができているでしょうか?
授業における具体的な工夫
それでは、実際の授業において、どのような改善を行うことができるでしょうか。
1時間の授業を「導入」「展開」「まとめ」に分けて、先ほどの”授業者(教員)が改善すべき項目”を考えてみましょう。
授業の「導入」において
授業の「導入」における、”授業者(教員)が改善すべき項目(同上より)”
- ①既習事項を振り返る
- ②具体物を提示して引きつける
- ③子供が自らめあてをつかむようにする
①既習事項を振り返る
まずは「①既習事項を振り返る」ことが挙げられます。
これは、既習事項と今回の授業で教えることのつながりを子どもたちに意識させる、ということです。
つながりの意識って?
今回の学びが、前回の学びの延長線上にあると気づかせることです。
例えば算数の授業であれば、以前に学んだ「角の描き方」を振り返ることで、「三角形の描き方」へのつながりを子どもたちに実感させることができるでしょう。
このようなつながりを実感させることで、以前の学習が役に立つことに、子どもたちは気づいていくはずです。
その気づきを得ることで、子どもたちはより「主体的」に学ぶようになるでしょう。
②具体物を提示して引きつける
特に小学校の子どもたちは、具体物が有効です。
確かに、具体的なものを子どもたちに見せると食いつきがいいですね!
もちろん中学校であっても同様ですが、やはり具体的な教具であったり資料であったりといったものは、子どもたちの関心をひきつけます。
例えば社会の歴史の授業において、教科書に載っている資料だけでは、子どもたちは当時の様子をイメージすることが十分にできません。
そこで、具体的な資料を提示します。
それは和同開珎であったり、火縄銃であったりします。
共通して言えることは、具体物の提示によって、子どもたちの関心が一気に高まる、ということです。
算数であればブロックや棒を用意して子どもに操作させたり、メジャーを使って実際の長さを測らせたりします。
ただ抽象的な説明を聞くだけではなく、具体物を提示することで子どもたちは関心を高め、主体的に学ぶようになります。
③子供が自らめあてをつかむようにする
これはかなり難しいです。
その授業の中で子どもが疑問に思ったことを自ら解決していくような授業展開が理想ですが、なかなかうまくいきません。
例えば社会の授業で、僕はユーロコインを使ってめあてを導き出したことがあります。
ユーロコインは国によって裏面の刻印が異なります。
そのことに気づかせると、子どもたちは「なぜ違いがあるのか」と疑問を抱きます。
それを授業のめあてにし、調べ学習をスタートさせました。
社会の授業においては、資料との出会わせ方が大きなカギを握ります。
他教科についても、子どもが疑問を抱くような授業の導入ができれば、子ども自らが授業のめあてをつかみ、「主体的に」学ぶことは可能です。
授業の「展開」において
授業の「展開」における、”授業者(教員)が改善すべき項目(同上より)”ここは段落ブロックです。文章をここに入力してください。
- ④子供が自分の考えを持つようにする
- ⑤子供の思考を見守る
- ⑥子供の思考に即して授業展開を考える
④子供が自分の考えを持つようにする
子どもが自分の考えを持つためには、「考えを持つための時間」と「ものの考え方の習得」が必要だと思います。
時間については、授業の中で「考える時間をとる」「周りと話す時間をとる」「ワークシートやノートに考えを書く時間をとる」などの、授業の展開における工夫が必要でしょう。
考え方自体を習得させるには、「机間指導」や「ワークシート・ノートへの朱書き」が有効でしょう。
授業の中で子どもたちに話しかけ、思考を深めていったり、考え方のきっかけを与えたりします。
授業中には時間が足りなくとも、朱書きであれば一人一人のレベルに合わせた支援ができます。
子どもたち自身に「こうやって考えればいいのか」という思いを持たせることができれば、自分の考えを持つことができるようになるでしょう。
⑤子供の思考を見守る
子どもたちの意見や考え、思考は時に大変危うく感じられるものです。
子どもという存在自体が未熟なのですから当然ですが、大人たちはそれを「矯正」しようとしてしまう傾向があることは、戒められなくてはならないでしょう。
未熟であれ不完全であれ、子ども自身が考えたことについては、「見守る」ことで肯定的にとらえたいものです。
もちろん、社会的に容認されないことについては正す必要もあるでしょうが、我々はつい、そうでないところまで矯正しがちです。
例えば図画工作の授業において、絵によって思考を表現することがあります。
「もっと大きく描こう」「ここに黄色を塗るといいよ」「白いところがなくなるまで描いたらよくなるよ」などといった言葉は、子どもたちが求めていない限りは、慎むべきだと思います。
それは子どもたちの思考を矯正することに他ならないからです。
子ども自身が考えたことを見守ることでこそ、子どもは「主体的に」学びに取り組むようになるのではないでしょうか。
⑥子供の思考に即して授業展開を考える
授業の展開は、子どもたちの思考に沿ったものであるようにすべきです。
時折、授業者である教員が教えたいことを優先するあまり、子どもたちの思考の流れが分断されている授業を見ることがありますが、これでは子どもたちは「主体的に」学ぼうとは思いません。
発問に対して予想される子どもたちの反応をもとにして授業を組み立てているとは思いますが、予想外の反応が返ってくると、ついつい教員の都合に合わせて思考の流れを分断してしまいがちです。
目の前の子どもたちの思考を大切にしながら、授業を流す勇気をもちたいものです。
授業の「まとめ」において
授業の「まとめ」における、”授業者(教員)が改善すべき項目(同上より)”
- ⑦子供の考えを生かしてまとめる
⑦子供の考えを生かしてまとめる
授業のまとめの段階では、教員がまとめを行うこともあるかと思います。
その際にも子どもたちから出された意見や見方をもとにしてまとめをおこなうと、子どもたちは自分の考えが役に立ったことを実感し、より「主体的に」学ぼうとするでしょう。
子どもたち自身にまとめを発表させる、という方法もあります。
授業の終了5分前に、「3分間でまとめを書こう」と伝えます。
そして2分間で、数人の子どもたちに「わかったこと」「感じたこと」「思ったこと」「もっと知りたいこと」などを話してもらいます。
机間指導の際に子どもたちのまとめを把握しておくと、より一貫した指名ができるようになります。
教員がまとめても良いのですが、子どもたち自身がまとめを行うことで、より「主体的に」学んだ、という実感を持つことができるでしょう。
結論:子どもたちの活動を軸にして授業を展開しよう
今回の結論です。
・主体的=自分から行動すること
・子どもたちを主体的にするには、適切な支援が必要
・子どもたちの活動を軸にして授業を展開しよう
あくまでも「主体的に」学ぶことは、この後に続く「深い学び」のための手段です。
けれども、子どもたちが主体的でなくては授業も面白くはなりませんし、力も身につかないことでしょう。
子どもたちをその気にさせて、よりよい授業を作っていきたいものです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、良い教員ライフを!
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