「対話的な学び」って何ですか?
今回はこんな疑問にお答えします。
・「主体的・対話的で深い学び」について知りたい人
・授業を改善していきたいと思っている人
・「対話的な学び」に関心のある人
主体的・対話的で深い学びとは?
主体的な学びとは?
主体的・対話的で深い学びの2つめである「対話的な学び」とはどんなものなのでしょうか。
字から想像すると、話し合う必要があるのでは?
「対話」ってそういうことですよね。
では、どんな授業をしていけばいいのでしょう?
うーん…「さあ、話し合ってください」という感じでしょうか?
そのあたりが曖昧な方は多いのではないでしょうか。
「対話的」に学ばせるためには、授業を改善していく必要があります。
それでは、具体的にどのような授業にしていく必要があるのでしょうか。
先に結論を書いておきます。
・「対話的な学び」とは、子どもが他者とかかわり合いながら行われる、相互作用的な学びのこと
・土台となるのは学級づくり
・子どもたちをかかわらせる場面を意識的に設定しよう
「授業を改善したい」「対話的な学びについて知りたい」という方はぜひ参考にしてみてください!
「対話的な学び」=相互作用での学び
「主体的・対話的で深い学び」の中の、「対話的」という言葉。
そもそも「対話的」とは、どういう意味なのでしょうか?
「対話的」の意味 (実用日本語表現辞典より)
二者間でやりとりを行い、相互に作用しながら事を進めていくさま。
では、「対話」とはどのような意味なのでしょう。
「対話」の意味 (三省堂 大辞林 第三版より)
双方向かい合って話をすること。また、その話。比喩的にも用いる。 「 -しようと努める」 「親子間の-」 「歴史との-」
これらを総合すると「対話的な学び」とは、「子どもたち」と「何か」が、話をしながら(比喩的であっても)相互に作用しながら学びを進めていく様子、ととらえることができそうです。
実際、今回の学習指導要領改訂のもととなっている中央教育審議会答申(平成 28 年 12 月)では、次のような考えが示されています。
「対話的な学び」とは (中央教育審議会答申(平成 28 年 12 月)より)
子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
身に付けた知識や技能を定着させるとともに、物事の多面的で深い理解に至るためには、多様な表現を通じて、教職員と子供や、子供同士が対話し、それによって思考を広げ深めていくことが求められる。
以上のことから、「対話的な学び」とは、子どもが他者とかかわり合いながら行われる、相互作用的な学びであるということができるでしょう。
子どもたちが「対話的」に学ぶために必要なこと
「対話的な学び」は、間違いなく学習面での話にはなるのですが、こと「対話」に関しては、重要なことは授業ではなく学級経営であると考えます。
子どもが他者とかかわり合いながら相互に作用しあって学ぶためには、何よりもまず「対話」を行うための学級の土壌が必要です。
発言を「聴く」ことができるか
教師の話を、あるいはクラスの仲間の話を聴くことができる学級になっているかどうか。
特に、「聞く」ではなく「聴く」ことができるかどうか。
これは「対話的な学び」を成立させる上で、とても重要なことになってくるでしょう。
「聴く」とは傾聴する、ということです。
話の内容を考えながら聞く、といってもいいでしょう。
クラスの仲間の話を傾聴するようになるには、仲間に対して興味や関心がなくてはいけません。
お互いに関係が希薄な学級では、仲間の話を聴こうとはしないでしょう。
学級担任としては、もちろん「聴く」ことの重要性を説き続けなくてはいけないのですが、同時に子どもたちが自然と耳を傾けたくなるような人間関係作りを進めていけるよう、支援する必要があります。
そのためにはあえて交流関係を広める活動を行ったり、トラブルを円満に解決したりしていくことが重要です。
発言を肯定的に受け止めることができるか
クラスの仲間が話したことを、否定的ではなく、肯定的に受け止めることができるかどうか。
これも、学級の雰囲気によるところが非常に大きいことです。
当然のことではありますが、クラスの中には理解の早い子どもたちもいれば、そうではない子どもたちもいます。
学習のレベルももちろんのこと、人間としての知性のレベルも一定ではありません。
そんな子どもたちが集まっているわけですから、「?」と思うような意見も飛び出してきます。
そんな意見に対して「はあ?何言ってんの?」という発言が子どもたちの間から出た瞬間に、「対話的な学び」は成立しなくなるでしょう。
対話によって学びを進めていくためには、「発言してもよい」という安心感が必要です。
「こんなことを言ったら、恥ずかしい思いをするかもしれない」と思いながら「対話的な学び」を行うことは、おそらく難しいでしょう。
どんな発言であっても肯定的に受け止める学級をつくるために、まずは教員が子どもたちの発言を否定しないところから始めましょう。
さすがに「はあ?」と言うことはないと思いますが、ちょっと困った表情をしたり、焦ったりするだけでも、子どもたちはその反応を敏感に察知するものです。
予想外の発言に対する切り返し方は、研究の価値があると思います。
子どもたち同士の関係が平等で、誰でも自由に考えを述べることが許されるか
「平等」と「自由」は、究極的には相反する概念です。
ですがあえてこのような表現にしています。
学級の中で、子どもたちの関係が完全に平等になることは、おそらくないでしょう。
スクールカーストという言葉もあるように、意識的にではないにせよ、能力や性格によって少しずつの差が生じるものです。
教員としては、その差をなるべく小さく感じさせるよう調整することが求められるでしょう。
特に、授業において実質的な不利益(Aくんが話した意見が正しいだろうから、もう僕は発言しないようにしよう、といった状況など)が生まれてしまうほど、その差を大きくしたくはないものです。
たとえ能力の差があったとしても、誰であっても平等に発言する権利が保障されている学級でなくては、「対話的な学び」を進めていくことは難しいでしょう。
授業における具体的な工夫
実際の授業では、どのような改善を行っていくと良いのでしょうか。
国立教育政策研究所からは、学習者(子ども)が改善すべき項目と、授業者(教員)が改善すべき項目が紹介されています。(https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/r02/r020603-01.pdf)
学習者(子ども)が改善すべき項目(同上より)
- 子供同士の協働を通じ,自己の考えを広げ深める
- 教職員との対話を通じ,自己の考えを広げ深める
- 地域の人との対話を通じ,自己の考えを広げ深める
- 先哲の考え方を手掛かりに考える
これらの項目は、子どもたちが自ら改善すべきことではありますが、当然ながら子どもたちは未熟なために、授業者(教員)が支援しなくてはなりません。
そこで、授業者が改善すべき項目としては、次のようなものが挙げられています。
授業者(教員)が改善すべき項目(同上より)
- 思考を交流させる
- 交流を通じて思考を広げる
- 協働して問題解決する
- 板書や発問で教師が子供の学びを引き出す
これらの要素を授業に取り入れていくことによって、子どもが他者とかかわり合いながら行われる、相互作用的な学び、つまり「対話的な学び」へと近づいていくことができるでしょう。
①思考を交流させるために
それぞれの子どもたちが考えた思考を交流させるには、そのための場を設定することが必要です。
ペア学習なのか?
グループ学習なのか?
それとも全体での話し合いなのか?
いずれにせよ、思考を交流させるには他者との対話が必要です。
そのための場面は、教員が授業の中で意図的に仕組む必要があるでしょう。
②交流を通じて思考を広げるために
思考を広げるためには、他者の考えを聞いてそれを理解することが必要です。
そのためには話を聴くための学習的な躾はもちろん重要になってきますし、上述したように子どもたちが自然と耳を傾けたくなるような人間関係作りを支援していかなくてはならないでしょう。
③協働して問題解決するために
いわゆる問題解決型の単元構想では、子どもたちが協働することで問題を解決しようとする姿を多く目にすることができます。
問題が子どもたちにとって切実であればあるほど、子どもたちは協働せざるを得ない状況へと追い込まれていきます。
我々教員としては、子どもたちが協働しなくては解決できそうにもない問題を提示していく必要があるでしょう。
④板書や発問で教師が子供の学びを引き出すために
授業の中での子どもたちの発言を羅列するだけでは、子どもたちの学びを引き出す板書にはなりません。
子どもたちの発言を整理して板書をすることによって、子どもたちの対話的な学び」を引き出すことができるでしょう。
例えば「さっきの○○さんの意見と似ているんだけど…」といったような発言は、子どもたちが話し合いの流れの中で、それぞれの発言の立ち位置を把握していなくては生まれないものです。
また、子どもたちの学びを深めるための発問も、推敲する必要があるでしょう。
例えば縄文時代と弥生時代の暮らしの様子を見せたとき「どんな違いがありますか?」と発問する場合と「どちらで暮らしたいですか?」と発問する場合では、子どもたちに注目させたい事柄は同じであっても、後者の方が明らかに”食いつき”が良いことでしょう。
子どもたちが面白さを感じるような発問を工夫することで「対話的な学び」を進めていくことができるのではないでしょうか。
結論:子どもが他者とかかわり合いながら行われる、相互作用的な学び
今回の結論です。
・「対話的な学び」とは、子どもが他者とかかわり合いながら行われる、相互作用的な学びのこと
・土台となるのは学級づくり
・子どもたちをかかわらせる場面を意識的に設定しよう
板書であったり発問であったりといった、授業の技術は磨かなくてはなりませんし、「対話的な学び」を促す上で大切なことです。
けれども前提として学級経営が順調で、子どもたちが話し合える関係であることは、それ以上に重要なことです。
「主体的・対話的で深い学び」の実現のために、良い学習集団を育てていきましょう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、良い教員ライフを!
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